【北京・浦松丈二、台北・福岡静哉】中国政府は21日、中米エルサルバドルと国交を樹立したと発表した。中国が国交樹立の条件とする台湾との断交をエルサルバドルが受け入れた。2016年5月の蔡英文政権の発足以降、中国と国交を樹立し、台湾との断交に踏み切った国は5カ国になった。これで台湾と外交関係を持つ国は17カ国に減少し、過去最少を更新した。
中国の王毅国務委員兼外相とエルサルバドルのカスタネダ外相が21日、北京で会談し、エルサルバドルが「世界には一つの中国しかなく、中華人民共和国政府は全中国を代表する唯一の合法的な政府であり、台湾は中国の不可分の領土の一部であることを承認した」などとする共同コミュニケに署名した。エルサルバドル政府が今後、台湾といかなる公的な関係も持たず公的往来もしないと約束したことも盛り込まれた。
王外相は署名後、「中国がいかなる国とも関係を確立し、発展させる際も一つの中国の原則を堅持することが根本的な基礎となる」と強調。中国が国交を樹立した国が178カ国になったことを明らかにした。これに対し、カスタネダ外相は「中国側と共に、交流・往来を強化し、実務協力を深化させ、両国の人民が実際のメリットを感じ取れるようにしたい」と応じた。
中国は蔡政権に対して「一つの中国」原則を中台が認めたとする「1992年合意」を受け入れるよう迫っており、台湾と外交関係を持つ国への攻勢も圧力の一環とみられている。
台湾では蔡総統が21日、エルサルバドルと断交したことを明らかにしたうえで「エルサルバドルを両岸(中台)外交戦の戦場にしないよう努力をしてきた。残念ながら中国政府は一歩も譲らず断交するよう再三圧力をかけてきた」と中国政府を非難した。