[東京 21日 ロイター] – 21日の東京株式市場で、国内携帯電話大手3社の株が売られた。菅義偉官房長官が「携帯電話料金は4割程度下げる余地がある」と発言したことが伝わり、収益悪化懸念が出たためだ。
携帯電話会社を巡っては、総務省や公正取引委員会も現行の商慣行や料金制度を問題視しており、値下げ包囲網は狭まりつつある。
21日の東京市場でNTTドコモ(9437.T)は4.0%安、KDDI(au)(9433.T)が5.22%安、ソフトバンクグループ(9984.T)が1.63%安で大引けを迎えた。
きっかけは菅官房長官の発言だ。共同通信によると、菅義偉官房長官は同日行った札幌市での講演で、大手携帯電話会社は巨額の利益を上げているとしたうえで「競争が働いていないと言わざるを得ない」と指摘。「携帯電話料金は、今より4割程度下げる余地がある」と述べ、通信料金の改革に意欲を示した。
実際、2018年3月期の営業利益をみると、ソフトバンクグループが前年比27.1%増の1兆3038億円、ドコモが同3.0%増の9732億円、KDDIが同5.5%増の9627億円と、3社とも国内トップ10に入る利益を稼いでいる。ドコモの親会社NTT(9432.T)も含めれば、トップ10のうち4社が通信会社という状況にある。
首相官邸が携帯電話料金に注文を付けたのは、今回で2回目。最初は2015年9月で、安倍晋三首相が経済財政諮問会議で通信料の引き下げに向けた方策を検討するよう指示したことで、3社の株は大きく売られた。
総務省はこの指示を受け、携帯電話市場改革を加速。通信料高止まりの一因とされている通信と端末のセット販売を分離する政策を推し進めたほか、楽天(4755.T)の携帯電話参入を認めるなど、通信料の値下げにつながる競争環境を整備してきた。
これには公正取引委員会も援護射撃し、通信と端末のセット販売はその程度により独占禁止法上問題となる恐れがあると警告している。
総務省の家計調査によると、2010年に3.66%だった世帯消費に占める電話通信料の割合は、2016年に4%を突破し、2017年には4.18%とじわりと増加している。固定電話は減少しており、代わりに増えているのが携帯電話だ。2017年の携帯電話の通話料は年間10万0250円と、初めて10万円を突破した。
ある総務省幹部は「通信料金が、他の消費を圧迫している」と述べ、現在の通信料の水準に不満を漏らした。
これに対して、ドコモは「これまでもさまざまな顧客還元を行ってきたが、今後もサービスの向上を目指して、顧客の要望を踏まえた料金サービスの見直しや拡充を順次検討、発表していきたい」(広報担当者)としたほか、KDDIも「引き続き、顧客ニーズに応えられるようサービスの向上に努めていく」(同)とコメント。ソフトバンクも「引き続き顧客にとってより良いサービスを検討していく」(同)との見解を示した。
今回は、ソフトバンクグループの下落率がもっとも小さかった。同社は通信会社というよりも、投資会社の色彩を強めていることが背景にあるが、通信子会社は年内に株式公開(IPO)を準備中だ。料金の値下げに追い込まれれば、IPOに影響が出る可能性も否定できない。
志田義寧 編集:田巻一彦