[ロンドン 17日 ロイター] – 英国のメイ首相は、政府の欧州連合(EU)離脱案に反対する与党・保守党議員に対し、同案でEUと合意しなければ、合意は成立しないことになると警告した。
英国は来年3月29日にEUを離脱する予定だが、離脱合意はまとまっておらず、保守党内の一部議員は、メイ首相がEUの合意を取り付けたとしても議会で否決するとの立場を示している。
メイ首相が、下院で合意承認に必要な320票を獲得できるかは不透明だ。
メイ首相はBBCテレビに対し「(政府案での合意に)代わる道は合意なしだ」と述べた。その上で、最終的に良い合意内容に議会の承認が得られると自信を示した。
ロンドンのカーン市長は、同国のEU離脱を巡り2度目の国民投票を実施すべきとの考えを明らかにしている。
国際通貨基金(IMF)は、英国が合意なくEUを離脱することになれば、英経済は縮小すると予想した。
英EU離脱交渉でEU側の責任者を務める欧州委員会のバルニエ首席交渉官は、交渉は友好協力の精神で行われていると述べた。ただEUは、英国との離脱交渉で、アイルランド国境での厳格な国境管理(ハードボーダー)回避などを含む幅広い問題の解決がなお必要との認識を示した。
ロイターが確認したEU文書は「離脱合意案の一部は英国とEU交渉官の間で原則合意に達したが、すべての分野で意見が一致するまで合意はない」とし、さらなる交渉が必要な問題として、英領北アイルランドとEU加盟国であるアイルランドの国境問題のほか、合意事項の監視、データ保護や特産品に関する問題を挙げた。
英紙タイムズは、EUのバルニエ首席交渉官が情報技術を駆使して国境検査を最小限に抑える方法について新たな案をまとめていると報じた。
報道によると、EUはコンテナのバーコードを用いて貿易品を管理する枠組みを計画しており、9月30日の保守党大会後に、EU各国政府にこの案を示す方針という。
タイムズによると、同案では全ての国境で大半の検査を行わないことを提案する見込みという。
EU当局者や外交筋は、交渉の焦点が北アイルランドとアイルランド国境間のモノの検査から、北アイルランドと英全土間の検査体制に移ったと指摘。EU外交筋の1人は「バルニエ首席交渉官が、実際は何も変わっていないが、英国側の意向に沿ったようにみえる形で文面で譲歩する発想を導き出している」と解説した。