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関連の事業を請け負う最大の建設会社が国有の中国交通建設
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「ポートシティー・コロンボ」など多くの事業で問題抱える
強引な開発の犠牲となったのがクリストファー・フェルナンドさんだ。インド洋に浮かぶ島国スリランカの西海岸、コロンボの北約20マイル(約32キロメートル)の海辺にある自宅が昨年、突然波に襲われ、台所では流し台しか残らなかった。30年間住んだわらぶき屋根の家が壊れた。
漁業で生計を立てているフェルナンドさん(55)は「砂の採取で何もかも破壊されつつある」と言う。波はかつて砂を運んでくれたが、今は砂浜を削っている。それほど遠くない海上には浚渫(しゅんせつ)船が見える。ここで集められる砂は中国交通建設(チャイナ・コミュニケーションズ・コンストラクション)が手掛ける「ポートシティー・コロンボ」の基礎工事に使われる。
中国の習近平国家主席が2013年に提唱した広域経済圏構想「一帯一路」に沿って、シンガポールとアラブ首長国連邦(UAE)のドバイの中間にあるコロンボに新たな金融ハブの建設を目指し、マリーナや病院、ショッピングモール、集合・戸建て住宅2万1000戸を含めた大規模な都市開発が進められている。
このプロジェクトは、貿易拡大と経済関係を支えるとともに、中国の権益を世界中で強化するために投じられる推計1兆ドル(約112兆円)に上るインフラ整備計画の一端だ。
政府・法人顧客向けに中国の海外投資を調査しているRWRアドバイザリー・グループ(ワシントン)によれば、国有の中国交通建設は一帯一路関連の事業を請け負う最大の建設会社だ。中国交通建設によると、同社は海外100カ国余りで700件のプロジェクトに関与しており、そのポートフォリオの価値は1000億ドルを超える。
だが同社とその子会社の事業は多くの国で疑念や論争を引き起こしている。フィリピンでは高速道路入札で不正に関わったとされ、09年に世界銀行のブラックリストに掲載された。前政権の汚職疑惑を受けマレーシアは今年、2つの鉄道事業を中止した。オーストラリアでは3月に出された政府調査報告書で、中国交通建設が所有する企業による小児病院建設の監督が行き届かず、水道水が鉛で汚染され、下請け会社によるアスベストを使った建材の利用が指摘された。中国交通建設は同社の過失ではないとしている。
ポートシティー・コロンボも環境問題で批判を浴びているが、中国交通建設を巡る問題はまだまだある。ケニアでの鉄道建設労働者の酷使とバングラデシュでの賄賂に関する疑惑に加え、カナダは5月、安全保障上の理由から同社による建設会社買収を阻止した。南シナ海の領有権が争われている海域で中国が岩礁を埋め立て軍事拠点を築いていることを手助けしているとして、米国の一部議員は中国交通建設に対する制裁を求めている。
中国交通建設の劉起涛会長は8月、同社の北京本社でブルーバーグテレビジョンのインタビューに答え、同社がプロジェクトを抱える国で政権が交代すると汚職疑惑が取り沙汰されるのはよくあることだと説明した。中国交通建設はビジネスを行っている全ての国で現地の法律と環境規制に従っていると主張。社内ガイドラインの順守も監視していると述べた劉会長だが、同社が南シナ海で何かしているとしても、それについてはコメントしないという。
劉会長(61)は「そうした種類の腐敗行動は持続可能な会社の発展の助けにならないことをわれわれは承知しており、役人に絡んだ一切の汚職行為を認めていない」と明言。「上場企業として市場の監視にもさらされており、もしそうした腐敗行為があれば、会社は終わりだ」と語った。
一帯一路については、習主席によって「提案された」もので、「人類の発展に関する懸念に基づき、中国だけでなく欧米の企業など誰であれ参加するよう招かれており、話し合いと協力を通じた利益の共有を目指している」との認識を示した。
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウイーク」誌に掲載)
原題:A Chinese Company Reshaping the World Leaves a Troubled Trail(抜粋)