国際刑事警察機構(ICPO)の孟宏偉総裁=2017年7月、シンガポール(AFP時事)

【北京、パリ時事】中国の汚職摘発機関、国家監察委員会は7日深夜、国際刑事警察機構(ICPO=インターポール、本部仏リヨン)の総裁を務める孟宏偉・公安次官について、違法行為の疑いで調査していると発表した。趙克志国務委員兼公安相は8日の公安省の会議で、孟氏の容疑を収賄と報告。孟氏は9月下旬にフランスから中国に一時帰国した後に消息不明になったが、汚職の疑いで連行、拘束されていることが確認された。

孟氏の問題では、リヨンに残る孟氏の妻からの連絡を受け、仏当局が捜査に着手したほか、ICPOは中国政府に説明を求める声明を出した。妻は7日、リヨンで記者会見し、「国際社会の問題だ」と述べ、各国政府の介入を訴えた。

孟氏は2004年、公安省の次官に昇格。習近平指導部による反腐敗闘争で失脚した周永康・元党中央政法委書記(無期懲役判決)に引き上げられた。公安当局を牛耳った周元書記の腹心だった公安幹部は次々と拘束されている。8日の公安省の会議では、「周永康の害毒の影響を断固、徹底的に一掃する」ことで一致した。

孟氏は16年11月に中国人として初めてICPO総裁に選出された。海外逃亡した元腐敗高官の摘発を強化する習指導部は、同総裁のポストを握り、元高官の引き渡しなど国際的捜査を有利に進める思惑も持っていたとみられる。しかし世界各国の警察を束ねる国際機関トップを、送り込んだ国の当局が摘発するのは極めて異例。習指導部は国内的に、反腐敗闘争に聖域がないことを強く印象づけたい狙いだが、国際的には中国の信用とイメージを損なった形だ。

孟氏の妻によると、孟氏がリヨンから中国へ向かった9月25日、孟氏からインターネット交流サイト(SNS)を通じ「私からの電話を待つように」と書かれたメッセージを受け取った。危険を表す絵文字も送られてきた。その後孟氏とは連絡が取れなくなった。妻は記者団に対し、「彼に何が起きたのか分からない」と震える声で語った。