カショギ氏の支援者たちはカショギ氏の写真を掲げながらイスタンブールのサウジ領事館前で抗議運動を行った(写真:REUTERS/Murad Sezer)

[イスタンブール(ロイター)]- 著名なサウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・アフマド・カショギ 氏の失踪に関するトルコの調査によって、カショギ氏が着用していた「Apple Watch」に、彼が拷問を受けて殺害されたことを示す録音がされていたことが判明したと、10月13日にトルコの新聞社が報道した。

親政府派の英字新聞「Daily Sabah」のこの報道は、すぐには裏付けが取れなかったが、カショギ氏の失踪に関する合同捜査のためにサウジアラビア代表がトルコ入りした後に表面化した。

Apple Watchのメモリー内に録音されていた

「カショギ氏が尋問され、拷問を受けて殺害された様子がApple Watchのメモリー内に録音されていた」と同紙は報道する。さらに、そのApple Watchはカショギ氏のiPhoneと同期設定されており、彼の婚約者がそのiPhoneを領事館の外で持っていたという。

二人のトルコ高官が先日ロイターに対し、カショギ氏は領事館の中へ入った時、黒いApple Watchを着用しており、それは領事館の外に残したiPhoneと同期されていたと語った。

しかし、カショギ氏のApple Watchからのデータが建物の外の携帯電話に送信が可能だったのか、あるいは、調査員は彼のApple Watchを入手せずにどのようにデータを見つけ出すことができたのか、という点が明らかではなかった。

テクノロジーの専門家たちは、Apple Watchが大使館内での行為を録音し、それがiCloudのアカウントへアップロードされたという可能性は非常に考えにくいという。Apple Watchのほとんどのモデルは、同期設定されているiPhoneから9〜15m以内に置かれていないとiCloudへデータをアップロードすることができないためだ。

ワイヤレスで直接クラウドと接続できる新型モデルでさえ、近くのWiFiネットワークへの接続か何らかのセルラー接続が必要で、専門家によるとトルコではそれらが利用できない。

Daily Sabahは、Apple Watchの件は「特別諜報部内の信頼できる筋」からの情報だと報じている。カショギ氏は領事館の中へ入る前にApple Watchをオンにしてあったと考えられる、とのことだ。

同紙によると、カショギ氏が殺害された後、彼のApple Watchがその様子を録音していたことにサウジ諜報部員が気づき、カショギ氏の指紋を使ってApple Watchをアンロックしてファイルの一部を削除したが、全部は削除されていなかった、という。

10月11日、トルコは、サウジアラビア政府からの申し出により、トルコとサウジアラビアがこの事件に関して合同捜査班を設置することに合意したと発表した。サウジアラビア筋によると、高位の王族カレド・アル・ファイサル皇太子がその日トルコを訪問していたという。

事件のあらまし

カショギ氏は10月2日、結婚のための書類を入手するためにイスタンブールのサウジアラビア領事館内に入った。サウジアラビア高官らによると、カショギ氏は間も無く領事館から立ち去ったと言うが、トルコ高官らとともに領事館の外で待っていたカショギ氏の婚約者は、カショギ氏が外に出てくることはなかったと説明している。

トルコの情報筋がロイターに語ったところによると、当初警察は、辛辣なサウジアラビア政府批判者であるカショギ氏が領事館内で意図的に殺害されたと判断していた。ところが、サウジアラビア政府はその見方をはねつけた。

10月12日、サウジアラビアの内務大臣アブドゥルアズィーズ・ビン・サウード・ビン・ナーイフ皇太子は、サウジアラビアによる謀殺説について「嘘いつわりであり根拠のない申し立て」であると非難した。ただしトルコとの合同捜査には賛同している。

サウジアラビア代表団は10月11日にトルコ入りし、本件を調査しているトルコの検察官および法務省・内務省・警察・国家諜報機関それぞれからの代表と会合を行っている。トルコの外務省によると、イスタンブールのサウジアラビア領事は、調査の一環として捜査を受けるという。

<東洋経済オンライン>からの転載