【カイロ篠田航一】サウジアラビアのサルマン国王(82)の実弟アハメド王子(元内相)が滞在先の英国から10月下旬、突如帰国したことがさまざまな臆測を呼んでいる。アハメド王子はムハンマド皇太子(33)を批判していた。サウジ人記者ジャマル・カショギ氏殺害事件への皇太子の関与が疑われる中、帰国理由について「皇太子更迭の準備」「皇太子を支える役割」などと、見方は割れている。最高実力者の進退に関わる可能性もあり、王子の動向が注目されている。
アハメド王子は70代。初代アブドルアジズ国王のスデイリ家出身の王妃を母とする最有力閥「スデイリ7兄弟」の一人だ。7人のうち存命なのはサルマン国王とアハメド王子の2人だけで、王室内の人望が厚いとされる。近年、ムハンマド皇太子が主導するイエメン軍事介入などを批判してサウジを離れ、主に英国に滞在していた。
英国の中東ニュース専門サイト「ミドル・イースト・アイ」はアハメド王子に近い筋の話として、「王子は、皇太子に代わる人物を選ぶ役割を担う」と伝えた。欧米の他メディアは「王子自身が国王に推挙される可能性がある」「王子は現指導部を補佐する立場になる」などと報じ、解釈が割れている。皇太子以外の王室幹部数人による重要会議が近く開かれるとの情報もある。
ムハンマド皇太子は若年層の人気が高く、治安組織を掌握していることから「権力争いは起きない」との観測も根強い。