【パリ時事】日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者が逮捕された事件をめぐり、フランスでは「クーデター」説が報じられているが、自動車大手ルノーの大株主である仏政府はこうした見方を否定する。ルメール経済・財務相が先頭に立ち、ルノーと日産の連合維持を強調している。

「陰謀説は信じない」。仏大統領府は地元メディアに対し、ゴーン容疑者の不正発覚と逮捕を日産による事実上のクーデターとみる報道を一蹴した。大統領府は経済紙レゼコーに対し、「陰謀なら外交的にかなり深刻な危機を引き起こす。日本人を信じたい」とコメントした。

仏政府の反応の背景には、ルノー・日産連合の安定的な継続をアピールする狙いがある。1999年の資本提携時にはルノーが日産を救済したが、その後立場は逆転した。現在、ルノーの収益は日産頼みで、連合維持は仏政府にとって最優先事項だ。

ルメール氏は21日、ルノーのボロレ暫定副最高経営責任者(CEO)、ラガイエット暫定会長と共同で行った記者会見を主導。「暫定企業統治は堅固であり、ルノーの正常機能を保証する」と強調した。ただ、ルメール氏はルノーの新体制について「あくまで暫定的」と説明する。ゴーン容疑者は「推定無罪の原則」(ルメール氏)に基づきルノーの役職解任を免れたが、仏紙ルモンドは「潔白を証明してCEOに復帰する可能性は低い」と指摘。ルノーの経営体制が政府主導で着々と固められる中、ゴーン容疑者の解任は時間の問題とみられている。