25日、ブリュッセルで臨時の欧州連合(EU)首脳会議に出席したトゥスクEU大統領(左)とメイ英首相(AFP時事)

【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)は25日、ブリュッセルで臨時の首脳会議を開き、英国のEU離脱合意案を承認し、正式決定した。加盟国離脱という前例のない交渉は、開始から約1年半を経て決着。今後は離脱日である2019年3月29日までの離脱協定発効に向け、英議会と欧州議会での承認の可否が焦点となる。

【図解】英EU離脱における今後のスケジュール(2018年11月)

 ユンケル欧州委員長は会議後の記者会見で、「これは考えられ得る最良の合意であり、唯一の合意だ」と強調した一方、「きょうはとても悲しい日だ」とも述べた。

英国内ではメイ首相が推し進めた合意への反発が与野党に広がっている。英議会では12月から来年にかけて離脱合意に関する一連の審議・採決が行われる見通しだが、承認のハードルは高く、先行きは不透明だ。メイ首相は会見で、「どんな交渉でも望むもの全ては得られない。英国民は離脱をめぐる論争にこれ以上の時間を費やすことは求めていない」と訴えた。

首脳会議では、離脱条件を定めた国際条約の「離脱協定」案と、将来の英EUの政治・経済関係の枠組みを描く法的拘束力のない「政治宣言」案を承認。スペインが最終局面で、離脱後の英EU間の交渉から切り離すことを求めた英領ジブラルタルの領有権をめぐる問題は、交渉分離を別文書で明文化することで英国、EUそれぞれと折り合った。

585ページに及ぶ離脱協定案には▽英国からEUへの「手切れ金」支払い▽双方の在英、在EU市民の権利保障▽20年末までの移行期間設置-などが盛り込まれた。交渉で最大の懸案となった英領北アイルランド問題については、移行期間中も解決策がまとまらない場合、移行期間を最長で2年延長するか、英国全体がEUの関税同盟に事実上残留するかを20年7月までに選択する。