【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で3カ月ぶりの利上げを決めた。利上げ幅は0.25%で、政策金利は2.5%に近づいた。先行きの利上げシナリオも公表し、2019年の想定ペースを従来の3回から2回に引き下げた。20年までに利上げを停止する考えも示唆し、15年末に始まった利上げ路線は転換点を迎えつつある。

19日、記者会見に臨むFRBのパウエル議長(ワシントン)=ロイター

19日、記者会見に臨むFRBのパウエル議長(ワシントン)=ロイター

 FOMCは短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を、年2.00~2.25%から2.25~2.50%へと引き上げた。米経済は失業率が49年ぶりの水準まで低下するなど堅調で、投票メンバー10人の全員一致で、年内4回目となる利上げを決めた。パウエル議長は同日の記者会見で「18年は金融危機以降で最も良い1年だった」と主張した。

 FOMC参加者(投票メンバー以外も含む17人)は先行きの金融政策見通しも公表し、19年の想定利上げ回数は計2回が中央値となった。9月時点では3回を想定しており、予測値を引き下げた。年4回となった18年と比べると利上げペースは大きく減速する。

 市場が注視する利上げの停止時期は、19年から20年となりそうだ。FOMC参加者の中央値は「20年も1回の利上げ」だが、中長期的に適切とみる政策金利の水準は2.75%と、9月時点の3.0%から引き下げた。同水準にはあと1~2回の追加利上げで到達するため、19年中に利上げを停止する可能性もある。

 FRBが利上げペースの減速を示唆するのは「数カ月前に比べ、景気鈍化を示唆する動きが幾分ある」(パウエル議長)ためだ。同議長は株価下落についても問われ「リスクは認識している」と強調。19日公表したFOMC声明文にも「世界景気や市場動向を注視し、景気見通しへの影響を分析する」と新たに盛り込んだ。

 物価に過熱感がないことも先行きの利上げ慎重論につながっている。物価上昇率(エネルギーと食品を除くコア)は3カ月連続で目標の2%を下回っており、パウエル氏も「驚いたことに物価動向は弱まっている」と認め、FOMC参加者は19年の物価見通しをやや下方修正した。

 FRBの利上げを巡っては、トランプ大統領が「常軌を逸している」などと繰り返し反対声明を出す異例の事態となっている。パウエル議長は「我々は独立しており、金融政策に政治は何の影響力ももたらさない」と強く反論した。FRBは従来示唆してきた通りに年4回目の利上げを決断したが、先行きの利上げペースの減速を示すことで、政権の要求にも事実上こたえたことになる。