海上自衛隊のP1哨戒機が日本海で韓国駆逐艦から火器管制レーダーを照射された問題。照射を否定する韓国側は4日に公表した動画の中で、「追跡レーダー(電磁波情報)の証拠資料があるなら、両国の実務者協議において提出すればいい」とも主張している。防衛省はP1が受信した火器管制レーダーの電波を詳細に分析し、証拠として既に首相官邸に報告したとみられ、どこまで出すかは高度な政治判断となっている。
自衛隊からは韓国側が公表した動画の内容を踏まえ、「収集した電波情報を開示しても、韓国側が誠実に対応しない可能性がある」「自衛隊の能力に関わる機微な証拠を提示してもエンドレスで不毛に終わる」と、政治・外交レベルでの早期収拾を求める声も出ている。防衛省は4日、韓国国防部が動画を公表したことに関し、「内容には、われわれの立場とは異なる主張がみられる。今後とも日韓防衛当局間で、必要な協議を行っていく」との声明を出した。
韓国側が公表した動画のうち、韓国側が撮影した部分は11秒で、残りは防衛省がホームページで公開したP1が撮影した映像を引用したものだった。自衛隊幹部は「何の新味もない。映像のどの部分を根拠にP1が韓国側の救難活動を妨害したと主張しているのかも不明だ」と指摘する。
また、韓国側が主張する威嚇的な低空飛行についても、「自国の排他的経済水域(EEZ)内に艦船がいれば、ある程度接近して艦番号や装備の状況を確認するのは当然だ。戦闘機ならまだしも、丸腰の哨戒機が高度150メートル、距離で500メートル離れて飛行したことで、駆逐艦は脅威に感じるのだろうか」と疑問を呈した。
P1が収集した韓国駆逐艦の火器管制レーダーの電磁波情報(周波数)は、横須賀基地(神奈川県)の情報業務群の電子情報支援隊で分析され、「動かぬ証拠」として、官邸にも報告されたという。 (時事通信編集委員 時事総研 不動尚史)。(2019/01/05-01:01)