【ロンドン時事】11日付の英紙デーリー・テレグラフは、メイ首相が議会に提出した欧州連合(EU)離脱合意案をめぐり、リチャード・ディアラブ対外情報部(MI6)元長官と、チャールズ・ガスリー元国防省統幕議長が「国家安全保障を脅かす(内容だ)」と警告し、下院議員らに阻止を呼び掛けたと報じた。

それによると、両氏は合意案を「悪い合意」だと主張した上で、「EUがコントロールする関係に(英国)を縛り付けることで国家安全保障政策に変更を迫ろうとしている」と批判した。

具体的には「国家の第一の責務は貿易ではなく、市民の安全(の確保)だ。合意案はこの基本的な(国家と国民の)契約を破棄し、国家安全保障の(さまざまな)側面の統制を外国の手に委ねようとしている。この悪い合意に反対票を投じ、世界貿易機関(WTO)ルールに基づく至高の(合意なき)離脱を支持する必要がある」などと訴えているという。

安倍晋三首相は10日、ロンドンでのメイ首相との会談で、合意案が議会で否決されたまま3月末の離脱を迎える「合意なき離脱」を回避するよう強く求めた。

しかし英国内は、かつて「大英帝国」として世界の覇権を握った過去を引きずり、いまだに大国意識が根強い。

与党・保守党の離脱強硬派らは「われわれは世界第5位の経済大国だ。合意なき離脱となっても繁栄していける」と吹聴してやまず、与党支持者らもそうした発言を本気にしている面がある。(了)