[ソウル 10日 ロイター] – 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は10日、青瓦台(大統領府)で年頭の記者会見を開き、日本企業の資産差し押さえが裁判所に認められるなどした元徴用工訴訟について、司法判決を尊重する考えを表明した。その上で、韓国との歴史問題を日本側は政治問題化すべきでないなどとけん制した。また、北朝鮮が米国から譲歩を引き出すには、非核化で「大胆な措置」が必要との認識を示した。 

文大統領は、日本の指導者が韓国との歴史問題を政治化させることは今後の二国間関係を損ねる可能性があり、賢明ではないと発言。また、韓国政府は司法判決を尊重しなくてはらならず、日本はそれを理解すべきとの認識を示した。 

第2次世界大戦中の元徴用工を巡っては、韓国最高裁が日本企業の賠償を認めた判決を受け、原告側が新日鉄住金の資産差し押さえを申請。韓国の裁判所がこれを認めたことから、日本政府は9日、駐日韓国大使に対し、1965年の日韓請求権協定に基づくニ国間協議を要請した。 

<在韓米軍の撤退は> 

文大統領は、近く2回目の米朝首脳会談が開かれる可能性があるとも発言。核交渉の行き詰まりを打開するためには、北朝鮮が2回目の米朝首脳会談で妥協する必要があるとの考えを示した。 

文氏は、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)や中距離弾道ミサイルの廃棄、核施設の解体といった具体的な措置を講じる必要があると主張。在韓米軍の撤退については、米国が応じる可能性は低いとの見方を明らかにした。 

文大統領は「2回目の首脳会談は、北朝鮮が具体的にどのような措置を講じるのか、それに対し米国がどのような見返りを与えるのか、その条件で合意する場となるだろう」と語った。その上で、「在韓米軍やグアム・日本などの戦略兵器は、北朝鮮だけに関係するものではない。北東アジア全体の安定と平和のために存在している」と述べた。 

2回目の米朝首脳会談が実現すれば、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による初のソウル訪問も実現するとの見通しも示した。 

同大統領は「2回目の首脳会談に向けて、間もなく米朝のハイレベル協議について話があるだろう」と述べた。 

ポンペオ米国務長官は昨年、複数回、平壌を訪問しているが、金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長との会談は昨年11月に突然キャンセルされ、日程の再調整も行われていない。 

さらに文氏は、金委員長が開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光の南北共同事業を無条件で再開する用意があると発言したことを歓迎。対北制裁を巡る問題の解決に向け、米国を始めとした国際社会と協力していく考えを示した。