[ロンドン 14日 ロイター] – メイ英首相は15日、自身が欧州連合(EU)と合意したEU離脱案を議会下院で採決にかけ、否決される可能性が高い。
否決されれば英国のEU離脱(ブレグジット)を巡る不透明感が強まるだろう。次に起こり得るシナリオを以下にまとめた。
●再び議会採決
首相は21日までに、英国の次の計画を示さなければならない。計画の内容は定かでないが、英メディアによると、首相はEUから何らかの言質を新たに得た上で、再び離脱案について議会採決を求めるとみられる。
一部議員からは、政府が一時的に主導権を返上し、超党派の上席議員でつくる委員会に移すという非伝統的な案が浮上している。
これが技術的に可能かどうか、また、十分な支持を得られるかは不明。政府は、秩序ある形でEUを離脱するという政府の法的責務を阻むような措置は、極めて憂慮すべきだとしている。
●首相辞任
首相は保守党党首を辞任し、同党は総選挙を経ずに新党首を選ぶ手続きに入る。
●党首の地位は当面安泰
首相は昨年12月の信任投票で、保守党党首としての信任を勝ち取った。このため、今後1年間は党首の座から降ろすことは不可能。
●内閣不信任決議
野党労働党は、EU離脱案が否決されれば内閣に対する不信任決議を求めると表明しているが、その時期は明確にしていない。
議会の過半数が不信任に投票した場合、労働党は14日以内に過半数の支持を得て政権を樹立できることを示す必要がある。その場合、総選挙を経ずに労働党が政権を奪うことができる。
●総選挙
メイ政権の不信任決議が可決され、かつ労働党が新政権を樹立できない場合には、総選挙が公布される。議会の3分の2が賛成すれば、メイ首相自身が解散総選挙に打って出ることも可能。ただ首相は、総選挙は国益に反すると述べている。
<長期的な選択肢>
●国民投票の再実施
ブレグジットを巡る国民投票のやり直しに至る道筋は、明確ではない。
ただ、議会に主導権を移すことに成功しない限り、時の政権が支持しなければ国民投票は行えない。再実施には議会での可決が必要。
首相が国民投票の再実施に断固反対しており、野党労働党も実施を約束していない(排除はしていないが)以上、再実施には首相交代か政権交代、あるいは突然の政策転換が必要となる。
事態打開のために国民投票を再実施すべきだと口にする議員は、与野党を問わず増えている。しかし今のところ、議会過半数が再実施を支持していることは確認できていない。
議会が原則として再実施を承認した場合、英国はEUに離脱延期を求める必要が出てくる。
●離脱の延期、あるいは撤回
政府は、より良い離脱案の交渉、総選挙、国民投票の再実施などに時間が必要だとして、EUに交渉期間の延長を求める可能性がある。
政府はまた、EUに対する離脱通告を撤回する可能性もある。EU司法裁判所は、英国が一方的に撤回できるとの判断を下した。
メイ首相は離脱を延期したくない意向で、離脱通告の撤回もしないと述べている。