海上自衛隊のP3C哨戒機が「低空・威嚇飛行」を行ったとする韓国軍の主張。証拠として24日に公開された対空レーダーの画面とみられる画像には、韓国駆逐艦とP3C距離約550メートル、高度約60メートルと表示されていた。日本側が説明してきた高度より低いため、防衛省は公表されたレーダー画像を徹底分析するとともに、当時現場海域で警戒監視していたP3Cが保有するデータを確認、検証する方針だ。
一方、P3Cとされる写真には水平線が写っておらず、自衛隊幹部は「高度を推定できず、証拠価値はない」と指摘した。
◇3次元対空レーダーの画面
韓国側が公表した2枚のレーダー画像は、韓国駆逐艦が装備する米レイセオン社製の3次元の対空(Air Search)レーダーの画面とみられる。自衛隊の説明によると、レーダー画像の記録日時は1月23日午後2時3分。秒の表記がないため2枚の順序は不明だ。画面上部にある「TBM Posn」は探知するターゲットの方位・距離、位置を表示する略称。その下に緯度と経度が表示されている。
◇探知モードは航空機
2枚のうち1枚はTBM Posn「143 0.30」とあり、これは韓国駆逐艦から南東方向に0.3カイリ(約550メートル)の距離に航空機が位置したことを意味する。ちなみに方位は0度が北、180度が南となる。画面下にはレーダーの航空機探知モード「AIR」の表示とともに、「Ht 200 ft(高度200フィート=約60メートル)」とある。表示を総合すると、1月23日午後2時3分に、P3Cとみられる航空機が韓国艦から南東約550メートルの距離にあり、高度約60メートルで飛行したという意味だ。
◇自衛隊制服組トップは「高度150メートル」
自衛隊制服組トップの河野克俊統合幕僚長は24日の記者会見で、1月23日のP3Cの飛行について、「高度は150メートル以上で、距離は1000メートル以上離れていた」と説明しており、今後、韓国側がこのレーダーの記録を根拠にデータの提示を求めてくる可能性もある。
しかし、レーダー照射問題で韓国側は情報交換を拒んだ経緯があり、照射問題すら決着が付いていない。岩屋毅防衛相は24日、記者団に「未来志向の関係を構築していく」としており、防衛省側がどこまで韓国側の主張に逐一反論するかは不明だ。
◇写真、「脅威とは到底思えず」
このほか韓国側が公表した艦上から撮影したとみられる写真には海面が写っていないため、P3Cの機体の全長(約35メートル)から高度を推定することはできない。しかも韓国艦に向かって飛行しておらず、同省幹部は「この写真が脅威の証拠と主張すること自体、到底理解できない」と話した。
◇赤外線写真に疑問点も
赤外線で撮影したとみられる白黒写真も公表され、P3Cとみられる機影が写っているが、撮影日時があるだけだ。韓国側はレーダーが航空機を探知した日時と、P3Cが飛行した日時が同一であることを証明するためとみられる。海自幹部は「赤外線画像には武器の選択に必要な自艦から探知目標までの距離・高度のデータが右下に表示されるはずだ。日時だけの表示は不自然」と指摘した。(時事通信社編集委員 時事総研 不動尚史)。(2019/01/25-00:27)