【ロンドン時事】3月末に迫った英国の欧州連合(EU)離脱をめぐり、「合意なき離脱」の阻止に向けた動きが議会下院で勢いを増している。与野党の有志議員は、メイ首相に離脱延期を強いる議員立法を計画。29日の採決で提案が支持されれば、合意なき離脱による混乱回避へ前進しそうだ。
最大野党・労働党の有力者イベット・クーパー議員が離脱延期を求める法案を提出。政府の離脱案が2月25日までに議会を通過しなければ、EUへの離脱延期要請を下院に対して提案するよう首相に義務付ける内容で、延期は最長12月末までとしている。
労働党幹部は22日のテレビで、クーパー氏の法案に党として賛同する公算が「次第に大きくなっている」と発言。野党各党のほか、首相率いる与党・保守党の一部議員も同調しており、法案は最終的に過半数の支持を集めるとみられている。
29日の下院では、まず法案の審議時間を確保するよう政府に求める動議が審議される。どの法案を優先的に審議するかは政府の専権事項で、野党発議の法案は冷遇されがちだからだ。動議が可決されれば本格的な審議に入り、法案は最速で2月5日にも下院を通過する可能性がある。
政府がEUと合意した離脱案は今月15日の議会で大差で否決された。首相は離脱案の見直しに向けてEUと協議する考えだが、EUは大幅変更に反対で、議会の支持を得られる修正案がまとまるめどは立っていない。
それでも首相は「離脱を延期しても問題は解決しない」と強気な姿勢を崩していない。残り時間が少なくなり、合意なき離脱が目前に迫れば、多くの議員が恐れをなして政府案賛成に回るはずだという計算が見え隠れする。
英メディアは、離脱延期法案の下院通過後に待ち構える上院での審議を含め、政府・与党があの手この手で法案の成立を妨げる可能性を伝えている。合意なき離脱を完全に排除するためのハードルは高く、先行きは予断を許さない。(2019/01/26-16:33)