Joe Mayes

英国の欧州連合(EU)離脱は今後の展開が定かではないが、どのような展開をたどろうと離脱決定は英国経済にすでに高い代償を支払わせている。雇用や投資、資本などで影響が目に見えて表れている。

  各分野の影響は以下の通りだ。

金融

  世界の金融大手が欧州での拠点再構築に動く中で、ロンドンの金融街からは資金と雇用が着実に流出を続けている。事情に詳しい関係者によると、大手5行はバランスシート上の資産で合計7500億ユーロ(約94兆円)をフランクフルトに移転させる。

  ロンドンから異動したバンカーの数は当初見込まれたよりも少ないが、それでも世界の金融大手は数千人をパリやダブリン、マドリードなどに動かす計画を打ち出している。いったん異動が決まった職はもうロンドンに戻ってこない可能性が高いと、英金融街シティーのロビー団体「ザ・シティーUK」は指摘する。

経済

  2016年6月に国民投票でEU離脱が決まって以来、ポンドはユーロに対して10%余り下落した。輸出業者には追い風となったかもしれないが、モノやサービスの輸入コストは上昇し、インフレを押し上げた。これは消費者の購買力低下を招き、ただでさえ厳しい英小売業者をいっそう苦しい状況に追い込んだ。

  英国内の企業はEU離脱を巡る不透明性を乗り切ろうと、投資決定を先送りしている。イングランド銀行(英中央銀行)は2018年の投資をゼロ成長と予想。経済成長も打撃を受け、UBSは2017年9月の調査で、EU離脱決定はすでに英国内総生産(GDP)を2%以上押し下げたとの見方を示した。この経済的な損失は長期に及びそうで、ブルームバーグがまとめた予測では、英経済が国民投票前の成長ペースを回復するのは2020年より後になると見込まれている。

relates to 英経済、EU離脱決定の影響すでに鮮明ー金融や投資に癒えない傷

製薬

  ロンドンに22年間拠点を置いていた欧州医薬品庁(EMA)のアムステルダム移転は、英製薬業界に癒えることのない傷を与えた。各社はEU内の試験施設や販売網確保に資金を投じざるを得ず、新薬開発への予算が縮小したと英製薬業界は論じている。

  EMAはすでに、英医薬品規制当局への業務割り振りを停止しており、英国のEU離脱以降に両機関が協力を続けるかは不透明だ。

人材

  英政府統計局(ONS)によると、EUから英国に流入した移民の数は6年ぶりの低水準に落ち込んだ。EU出身労働者に頼る状態が続いていたホスピタリティ産業や農業、建設、医療・福祉などでは人手不足が深刻になった。

クレジット

  ポンドと英経済を巡る不透明性は、世界のクレジット市場におけるポンドの地位低下に拍車をかけた。ブルームバーグがまとめたデータによると、海外の非金融企業が昨年発行したポンド建て債券の額は70億ポンド(約1兆円)と、17年の半分より少なかった。一方、英主要銀行の劣後債保証コストはここ数カ月で上昇している。

原題:Whatever Happens to Brexit, Here’s the Damage to Britain So Far(抜粋)