4週間前に近代の英議会史上、最大の大差で自らの提案が否決されたメイ英首相だが、欧州連合(EU)離脱案の議会承認に道が開けつつあるかもしれない。
首相は英国内で不人気の離脱協定をEUと再交渉しようとしているが、今のところ実を結んでいない。それでも英議員の間では、首相が最終的に議会の承認を得られるとの楽観が強まっている様子だ。予断は許さないにせよ、議員や閣僚の計算に基づくと、承認に至る可能性はある。
承認への道のり
前回の採決では432対202の大差で否決されたメイ首相は、116人を承認に回らせる必要がある。支持に転じる可能性があるのは以下の通りだ。
民主統一党(DUP):10
北アイルランドの地域政党、DUPが鍵を握る。DUPは妥協点を見いだすことに前向きな兆しを見せている。DUPの要求は首相の離脱協定に「法的拘束力のある変更」を加えることで、保守党議員の多くに比べて強硬な姿勢ではないが、首相はこの要求を満たす妥協をEUから勝ち取る必要がある。
保守党:75
前回の採決で反対票を投じた保守党議員は118人に上り、同党議員の3分の1以上を占めた。だが、強硬なEU懐疑派は比較的少数だ。また約50人は本質的には体制支持派で、政府案に支持票を投じる理由を探しているとされる。これに加えて、少なくとも25人はDUPが支持に回る場合は説得可能とみられている。首相が保守党議員全員の支持を得ることは不可能だ。あらゆる類いのEU離脱に反対、または強硬なEU離脱を望む議員もいるが、匿名で語った閣僚の1人によると、保守党内の首相案反対派は35人にまで縮小する可能性がある。
労働党:40
前回の採決で首相案を支持した労働党議員はわずか3人だった。だが、その2週間後に実施されたEU離脱を巡る修正案の採決では、14人が政府を支持し、さらに8人が棄権した。コービン党首も融和的な姿勢を示している。現実的に、党内から強い反発が見込まれるためコービン党首自らが政府の離脱案を支持することはないが、EU離脱支持の地区選出議員に自由に投票させることに違和感はないとされる。労働党の影の内閣の1人は匿名で、議会と英国内にはEU離脱を片付け、他の問題の議論に移りたいという強い希望があると述べた。
誤算が生じる可能性は
第一には、DUPにかかっている。DUPが要求する「法的拘束力」がどこまでの意味合いを持つのかに、多くが左右される。
保守党議員が予想以上に断固反対の立場を貫く可能性もある。多くは活動家から離脱案に反対票を投じるよう圧力がかかっている。さらに労働党が策略を働かせる恐れもある。首相を再び敗北に追い込むことが、コービン党首にとって極めて魅力的に映るかもしれない。
首相が勝てば、すべて一件落着か
全くそうはならない。EU離脱の延期を要請せずに期限内に法的な準備を全て整えるには、メイ首相は3月末までに約50の採決を乗り切らなければならない。
原題:How Theresa May Might Just Pull It Off: This Is the Brexit Math(抜粋)