【ロンドン時事】英国が欧州連合(EU)を離脱する3月29日まで1カ月余りとなった。しかし、英政府とEUが昨年まとめた離脱案は、議会承認のめどが一向に立たない。政界・経済界は焦燥感を募らせ、「国家の危機だ」「合意なき離脱は核爆弾になる」などと悲痛な声を上げ始めた。

 「協議は重大な段階を迎えた」。先月の議会で大差で否決された離脱案の見直しを模索するメイ英首相は12日、EUとの話し合いを続行する意向を表明した。ただ、議会は14日の投票でこれを否決。拘束力のない採決だったため、首相が方針転換を強いられることはないが、求心力を欠いた状態での政権運営は風前のともしびだ。

 メイ首相に有効な交渉カードは残っておらず、EUが譲歩しなければ、社会・経済に混乱をもたらす「合意なき離脱」も辞さないという瀬戸際戦術に終始している。最大野党・労働党のコービン党首は「英国は一世代に一度の大きな危機に直面している」と批判のボルテージを上げる。

 一方、EUは英国への「口撃」を強化。フェルホフスタット欧州議会議員(元ベルギー首相)は、メイ首相の陰で糸を引く英与党・保守党の「ハード・ブレグジット(強硬な離脱)」派を18世紀のフランス革命の政治指導者になぞらえた上で、「彼らは断頭台で生涯を終えた」と警告した。強硬派には「地獄の特別な場所」が待っていると主張したトゥスクEU大統領に続く過激な挑発だ。

 EUの小国マルタのシクルーナ財務相はブルームバーグ・テレビで「合意なき離脱は核爆弾のようなものだ。誰も望んでいない」と訴えた。

 英経済界では、政治の決断力のなさにため息が漏れている。ロンドンの金融街シティーの関係者は「また(貴重な)1日が失われた。砂時計の中を最後の砂粒が滑り落ちていく」と、視界不良のまま問題解決が先送りされ、残り時間が少なくなっていく現状にいら立ちを隠さなかった。(2019/02/17-15:42)