【ワシントン時事】トランプ米大統領は15日、メキシコ国境経由の不法移民流入が国家安全保障や人道上の危機をもたらしているとして、非常事態を宣言すると発表した。不法移民対策で公約した「国境の壁」建設に向け、大統領権限を行使して予算を確保するのが狙いだが、野党民主党は「言語道断の職権乱用」(シューマー上院院内総務)と猛反発している。
ホワイトハウスで記者会見したトランプ氏は、非常事態宣言について「他の(歴代)大統領も署名してきたが、ほとんど問題になっていない」と主張。「(過去の宣言には)はるかに重要性が低い問題も多かった。われわれは薬物や人身売買業者、犯罪者らの侵入に対処するのだ」と正当性を訴えた。
トランプ氏はこの日、国境の「フェンス」建設費13億7500万ドル(約1500億円)を盛り込んだ予算案にも署名し、暫定予算失効に伴う政府機関の一部閉鎖は回避。ただ、予算案には「壁」という表現が入らず、額もトランプ氏が要求する57億ドル(約6300億円)を大幅に下回っている。
米ABCニュースなどは14日、ホワイトハウス当局者の話として、トランプ氏が非常事態宣言を含む大統領権限によって、80億ドル(約8800億円)規模の財源を壁建設に振り向ける計画だと伝えた。15日成立の予算に含まれる分のほか、防衛関連の建設予算や薬物対策費などの活用を想定しているという。
民主党は非常事態宣言について「国境で起きていることは、人道上の危機ではない」(ペロシ下院議長)と批判。法的手段に訴えることも辞さない構えだ。(2019/02/16-01:19)