東京都議会の主要会派が築地市場跡地(中央区)の再開発を巡って対立し、混迷を深めている。20日開会の第1回定例会は戦後初となる初日流会こそ免れたが、小池百合子知事の施政方針演説は21日未明にずれ込む異例の事態となった。都が先月発表した再開発の方針が一昨年の都議選前の公約と大きく異なるのに、知事が説明しないのが原因だ。知事与党の間にも議会運営を巡ってしこりが生まれ、来年夏の知事選にも影響しそうな情勢だ。
21日午前0時半過ぎ。傍聴席の大半が空席で、目をこする都議もいる中、知事の演説が始まった。しかし、再開発については「築地を先進性と国際性を兼ね備えた東京の新たな顔に育てたい」などと述べるにとどまった。
小池知事は一昨年6月、都議選告示を3日後に控え、豊洲への市場移転の賛成・反対両派に配慮する形で、跡地などに市場機能を残して再開発する「食のテーマパーク」構想を表明した。市場業者の使用料収入などで賄う「中央卸売市場会計」で保有を続け「税金を新たに投入することはない」とも明言。都議選は知事が率いる都民ファーストの会が大勝し、自民から都議会最大会派の座を奪った。
だが、都は先月、再開発案に食のテーマパーク構想を盛り込まず、国際会議場や展示場を軸に整備すると発表。跡地も都税などが原資の約5600億円で買い取り、一般会計に移す方針を示した。
これを「公約違反」「説明不足」と批判する自民、共産など6会派は開会前日、委員会に知事を招致して一問一答形式での質疑をするよう議長に要求。これを不要と主張する都民ファーストと公明は、他会派の合意がないまま知事を招致しない方針を決めた。しかし、若手が難色を示したため都民ファーストが「強硬路線」を取り下げ、公明は「信義則を破った」と反発した。
最終的には議長が知事を招致する案を示して各派が合意した。開会にこぎ着けたのは、開会時間の期限となっている午後5時の15分前。その後も約1分で休憩するなど3度中断し、知事の演説が始まったのは当初の予定の11時間以上後だった。ある都幹部は「与党も野党も執行機関も情けない。都民不在でこんなことをしていて良いのか」と漏らす。
都民ファーストの議席は過半数に届いておらず、小池知事が公明の協力を得るため、要望をそのまま取り入れた事業も多い。2020年東京五輪前に行われる知事選でも公明の動向は鍵となる。別の都幹部は「与党間の不信感が今後の都政運営や知事選に火種を残した」と指摘した。【市川明代、森健太郎、竹内良和】