- 私は無実だ、裁判で徹底的に潔白主張へ-ゴーン被告が声明
- 「厳しい保釈条件だがよかった」とゴーン被告担当の弘中弁護士
東京地裁は5日、会社法違反(特別背任)や金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪で起訴され、東京拘置所に勾留されていた日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の保釈を認める決定をしたと発表した。同日夜には検察による準抗告も棄却したと発表したことで、ゴーン被告は早ければ6日にも保釈される可能性が出てきた。
保釈保証金は10億円。勾留期間は昨年11月の最初の逮捕から100日以上に及んでいる。
ゴーン被告は家族を通じて声明を発表。「厳しい試練の間ずっと私を支えてくれた家族や友人に、心から感謝している。そして推定無罪の原則と公正な裁判のために闘ってくれた日本や世界の非政府組織や人権活動家にも感謝する。私は無実であり、こうした事実無根で根も葉もない告発に対し、公正な裁判で徹底的に潔白を主張することを固く決意している」と表明した。
2月にゴーン被告の新たな弁護人となった弘中惇一郎弁護士らが同月28日に保釈請求を出していた。前の弁護士による過去2回の保釈請求は却下されていたが、弘中氏は保釈後の証拠隠滅などが疑われないよう、今回は監視カメラを設置するなど外部との接触を断つ仕組みを提案。「説得力のある保釈申請」を心がけたとし、「そう遠くない時期に保釈となる可能性はある」と話していた。
保釈決定を受けて弘中弁護士は電話取材で「保釈を無事にできてよかった。厳しい保釈条件だが、これからきちんと遵守していきたい」と述べた。地裁によると、保釈条件については、国内の住居制限や海外渡航禁止のほか、証拠隠滅や逃亡を防ぐための条件が付けられた。
一方、東京地検の久木元伸次席検事は広報を通じて「特段のコメントはない」とだけ述べた。日産の広報担当者は保釈が認められたことについて、裁判所や検察が決定したことについてコメントする立場にないと述べた。
昨年11月19日に東京地検に逮捕されたゴーン被告は3つの事件で起訴され、東京拘置所での勾留生活が100日以上に及んでいた。海外から長期勾留に対する批判が出ていたほか、ゴーン被告の家族は国連の恣意的拘禁作業部会に対し、同被告の長期勾留は基本的人権を侵害するものだとして保釈への支援を求める方針を示していた。
検察が手掛ける特別背任事件において、被告が全面否認しているにもかかわらず保釈が認められるのは珍しいケース。弁護士でコーポレートガバナンスなどに詳しい上智大学のスティーブン・ギブンズ教授は、弘中弁護士ら新たな弁護団が就任したことや、国際社会の厳しい監視などが今回の決定につながったとの見方を示した。
ゴーン被告は1999年に経営危機に陥っていた日産に出資したルノーから送り込まれ、国内工場の閉鎖を含む大規模リストラを実施するなどで業績のV字回復を達成した。一昨年4月に西川広人社長に日産CEOの座を譲り、逮捕直前は日産とルノー、三菱自動車とアライアンスの会長を兼務するなど新車販売台数で世界首位クラスに成長した自動車グループの経営にあたっていた。
ゴーン前会長逮捕からの経緯 |
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<2018年> ・11月19日 11年3月期から5年間の役員報酬を有価証券報告書に過少記載したとして金融商品取引法違反の疑いで東京地検がゴーン前会長とグレッグ・ケリー前代表取締役を逮捕 ・22日 日産が臨時取締役会を開きゴーン容疑者の代表権と会長職、ケリー容疑者の代表権を解くことを決定 ・30日 両容疑者の勾留期間の12月10日までの延長を東京地裁が認める ・12月10日 東京地検が両容疑者を金商法違反の罪で起訴、18年3月期までの3年間についても同法違反の疑いで再逮捕 ・20日 東京地検による両被告の再逮捕による勾留期間の延長請求を東京地裁が却下 ・21日 東京地検がゴーン被告を会社法違反(特別背任)の疑いで3度目の逮捕 ・25日 東京地裁がケリー被告の保釈を許可、東京拘置所から出る ・31日 東京地検によるゴーン被告の3度目の逮捕に関する勾留延長請求を東京地裁が認める <2019年> ・1月4日 ゴーン被告が勾留理由の開示を東京地裁に請求 ・8日 ゴーン被告が勾留理由開示請求で出廷し無実を主張 ・11日 東京地検がゴーン被告を特別背任罪で追起訴、ゴーン、ケリー両被告と法人としての日産を金商法違反の罪でも追起訴 同日 ゴーン被告の最初の保釈請求を地裁が却下 ・18日 ゴーン被告の弁護人が2度目の保釈請求(後に却下) ・23日 ゴーン被告が仏ルノーの会長・CEOを辞任 ・24日 日産がゴーン被告の取締役解任などを目的とする臨時株主総会の4月開催を決定 ・30日 ゴーン被告が日経新聞のインタビューに応じる ・2月13日 ゴーン被告の逮捕以来、弁護を担当してきた大鶴基成弁護士が辞任、弘中弁護士が新たな担当に ・28日 弘中弁護士らがゴーン被告の保釈請求、検察が弁護側に証拠の一部を開示 |