[ワシントン 6日 ロイター] – 米商務省が6日発表した2018年の貿易赤字は前年比12.5%増の6210億3600万ドルと、08年以来10年ぶりの高水準となった。減税で内需が刺激されたことで輸入総額が過去最高を記録したほか、対中貿易赤字も過去最高となった。
17年の貿易赤字は5522億7700万ドルだった。
米政権の保護主義的な通商政策にもかかわらず貿易赤字は拡大している。トランプ米大統領は、不公平な競争条件から米製造企業を守る必要があるとして保護主義政策を進めてきた。
米政権は昨年、2500億ドル規模の中国製品に輸入関税を発動。中国は1100億ドル規模の米国大豆やその他の商品に対して報復関税を課した。8カ月間続いている関税措置の応酬を解決するための米中協議が続く中、米国は2000億ドル規模の追加関税を先送りした。
米政権はまた、鉄やアルミニウム、太陽光パネル、洗濯機にも輸入関税を課した。
18年の対中貿易赤字は前年比11.6%増の4191億6200万ドルと、過去最高となった。
昨年は60カ国からの輸入が最高で、輸入総額は2兆5630億9000万ドルと全体でも最高となった。主要な輸入先は中国、メキシコ、ドイツだった。
18年のモノの貿易赤字は8913億ドルと、過去最高。12月に12.4%と急増したことが押し上げ要因となった。
MUFG(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏は「トランプ政権が進める『米国を再び偉大にする』取り組みにもかかわらず貿易赤字は昨年、大幅に拡大した。こうしたトレンドが19年に改善する公算は小さい」との見方を示した。
米国製造業同盟(AAM)のスコット・ポール会長は、「トランプ政権の財政政策が貿易赤字を押し上げる方向に働いた」と指摘。「トランプ氏は、ツイッターへの投稿や大言壮語だけでは貿易赤字を大幅に削減できないと悟るだろう」と述べた。
18年はモノの輸出が1兆7000億ドルと、過去最高を記録したものの、米中通商摩擦、世界的な需要の減退、ドル高などが重しとなり、10─12月は減速していた。
エコノミストは米中が通商問題で合意したとしても、米国の輸出が低調な状態は改善されないと指摘。ナロフ・エコノミック・アドバイザーズ(ペンシルバニア州)の首席エコノミスト、ジョエル・ナロフ氏は「中国の経済成長がエコノミストの予想通りに軟調なら、中国で米製品に対する需要が年内に大きく伸びると予想するのは難しい」としている。
昨年12月の貿易赤字は18.8%増の597億6900万ドルと、08年10月以来の高水準だった。市場予想の579億ドルを上回った。輸出が3カ月連続で減った一方で輸入が持ち直した。
実質の貿易赤字を示すインフレ調整後のモノの貿易赤字は前月から100億4700万ドル増の916億0700万ドルと、過去最高となった。
実質的な貿易赤字が大きく拡大したことで、第4・四半期国内総生産(GDP)に対する貿易の押し下げ効果は、前週発表の速報段階の0.22%ポイントより大きかった可能性がある。
商務省が前週発表した18年第4・四半期の実質GDP(季節調整済み)は年率換算で前期比2.6%増。エコノミストの間では2.3%増に下方改定されるとの見方が出ている。
12月のモノとサービスの輸出は前月比1.9%減の2051億1600万ドルと10カ月ぶりの低水準。世界的な需要減少や、ドル高が重しとなっている。
内訳は、産業用資材と原料が21億1700万ドル減。うち石油製品は8億8900万ドル減、原油は4億7600万ドル減だった。
資本財は16億7200万ドル減少した。民間航空機が9億9700万ドル減少し、全体を押し下げた。
一方、中国の輸入関税対象となった大豆の輸出は41.2%増加した。
モノとサービスの輸入は前月比2.1%増の2648億8500万ドルだった。中国製品に対する追加関税を予想して企業が在庫を積み上げた影響とみられる。消費財は23億7500万ドル増。家庭用具が6億9300万ドル増加し、全体を押し上げた。
携帯電話は5億7900万ドル増。資本財は27億4200万ドル増加した。うちコンピューターの周辺機器が7億2000万ドル増。コンピューターも6億6100万ドル増えた。