トランプ大統領は昨日、2020会計年度(19年10月~20年9月)の予算教書を議会に提出した。ロイターによると総額は4兆7000億ドル。このうち86億ドルを壁建設費用として要求した。要求額は過去2年度の予算で議会が承認した国境関連予算の6倍を超える。さらに、国防費を4%増加させ7500億ドルに膨らませた。その一方で、対外支援費の130億ドル削減のほか国務省予算の23%、環境保護局(EPA)予算の31%をそれぞれ減額も盛り込んだ。低所得者向け食料購入補助制度(フードスタンプ)を含め、義務的経費を1兆9000億ドル削減するとしている。壁ファースト、強いアメリカファーストの予算である。
これに対して民主党の批判も凄まじい。ロイターのニュースからピックアップする。「過去2回の予算教書よりも一段と現実離れしている」( ニタ・ローウィー下院歳出委員長)、「トランプ氏の提案は印刷された紙ほどの価値もない」(パトリック・リーヒ上院歳出委員長)と手厳しい。ペロシ下院議長とシューマー上院院内総務の連名で発表された民主党の声明は、「(議会に拒否されて)同じことを繰り返すだけだ。トランプ大統領が学習することを願う」と、まるで子供に言い含めるように上から目線で揶揄している。そして、「もう一度やっても、同じことが自動的に繰り返される」と警告している。まるで来年も政府機関が閉鎖されると予言しているかのようだ。
ホワイトハウスは、財政が今後10年間で2兆7000億ドル改善するとの試算を示しているという。その一方で、財政均衡の実現は2034年まで実現しない見通しだともいう。日本と同じように米国も財政均衡の先送りである。きのうこの欄で書いたが、MMT理論に依拠すれば民主党も、壁建設を除いた本音ベースでは、トランプ大統領の拡大路線に反対というわけではないだろう。かくして米国の株価は上がり、金利は下がる。それにしてもトランプ氏の執念は凄まじい。あれだけ反対されている壁に6倍の予算を要求する。およそ真っ当な神経では理解できない。だが、選挙公約の実現にとことんこだわるこの異常性が、よくも悪くも米国社会を牽引していることは事実だ。大統領選挙を睨んだ予算ということも、民主党との対立を煽る一因になっているのだろう。