[ワシントン 11日 ロイター] – トランプ米大統領は11日に議会に提出した2020年度(19年10月─20年9月)予算教書で、国防費の拡大のほか、メキシコとの国境沿いに壁を建設する費用として86億ドルを要請した。一方、対外支援費の削減のほか、低所得者や高齢者に対する社会保障費用の削減を求めた。
民主党が過半数を握る下院で否決される可能性は高く、議会の予算審議は難航が予想されている。ただ今回の予算教書は、2020年の大統領選での再選に向けたトランプ氏の初期の段階の政策上の優先事項の宣言と受け止めることもできる。
トランプ大統領は4兆7000億ドルの予算教書で、86億ドルの壁建設費用を要求。この額は、過去2年度のそれぞれの予算で議会が承認した国境関連予算の6倍を超える。さらに、国防費を4%増加させ7500億ドルとするよう要請した。
一方、対外支援費の130億ドル削減を求めるほか、国務省の予算を23%、環境保護局(EPA)の予算を31%それぞれ減額することなどで、非国防費予算は11年に定められた上限は超えない。また、低所得者向けの食料購入補助制度(フードスタンプ)などの構造的改革を通じ、義務的経費を1兆9000億ドル削減することを求めた。
ホワイトハウスは、財政が今後10年間で2兆7000億ドル改善するとの試算を示しているものの、財政均衡の実現は2034年まで実現しない見通し。
ニタ・ローウィー下院歳出委員長(民主党)は、今回の予算教書について「過去2回の予算教書よりも一段と現実離れしている」と批判。パトリック・リーヒ上院歳出委員長(民主党)も、トランプ氏の提案は「印刷された紙ほどの価値もない」と酷評した。
超党派の「責任ある予算委員会」は今回の予算教書に従えば、米国の債務は向こう10年間で10兆5000億ドル増加するとの試算を示し、この期間に米経済は3%成長を実現するとの見通しは「幻想」に過ぎないとの見方を示した。