[ロンドン 12日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 英国は最終目的地が分からない長旅をさらに続ける。英議会は12日、メイ首相が示した欧州連合(EU)離脱の修正案を否決した。離脱期日まで残り17日になったことで、恐らくさらに時間を稼ぐことが次の一手になる。それが最も痛みの少ない進路だろう。 

今回の採決における賛成と反対の票差は149で、最初の離脱案が否決された1月の230よりは縮まった。それでもこれは屈辱的だ。メイ氏は離脱案を批判した多くの人々を安心させようと、過去2カ月にわたってEUから譲歩を引き出そうとしたわけだが、結局その努力はほぼ水の泡になった。 

メイ氏はあと2週間余りで自らの提案を復活させる可能性はある。一方、議会はすぐにも2つの選択肢を突き付けられる。1つ目は29日にEUと合意のないまま離脱するのを是とするかどうかだ。13日に行われる採決でこの方針は否決されると想定され、翌日14日に離脱延期をEUに求めることを可決するしか道はなくなる。 

とはいえ、それで離脱延期が確実になるわけではない。EU加盟27カ国の承認が必要だからだ。英国を数カ月余計にEUにとどめた場合、5月末に実施される欧州議会選挙をややこしくしかねない。また英国内の欧州懐疑派は、離脱延期を2016年に国民投票で明らかになった民意に背く行為だと攻撃する材料にするだろう。 

もっと大事なのは、時間を稼いでも英国の政治家がなお決められないでいる基本的な選択肢に変化はないという点にある。つまり合意ありもしくは合意なしでEUを離脱するのか、それとも2回目の国民投票を経て離脱を撤回するのかだ。 

この決定的瞬間が12日の離脱修正案否決でよりはっきり見えてきたわけではないが、少し後ずれする公算は大きくなった。 

●背景となるニュース 

・英下院は12日、メイ首相と欧州連合(EU)がまとめた離脱修正案を否決した。 

・賛成242票、反対391票で差は149票と、1月の採決時の230票を下回った。 

・13日にはEUと合意のないまま離脱することの是非を採決する。与党・保守党議員には党議拘束がかけられない見通しだ。 

・議会が13日に合意なき離脱を否決した場合、14日にEUに対して離脱延期を求めるかどうかを採決する。 

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。