占部絵美、日高正裕
- 消費増税は延期すべきだ、景気後退局面に向かう可能性高まる
- 金融政策で景気を刺激するのは難しい、打ち出の小づちはない
小泉政権で経済財政政策担当相などを務めた竹中平蔵東洋大学教授は、日本銀行の異次元緩和の副作用は明白だとした上で、景気が悪化しても日銀に残された手段は少ないため、政府は規制緩和など成長戦略に本腰を入れるべきだとの見解を示した。今年10月に消費税増税が実施されれば景気後退局面に向かう可能性が高まるとし、延期が必要との持論も重ねて主張した。
竹中氏は8日のインタビューで、異次元緩和は物価がプラスとなる効果を示す一方で、「副作用は間違いなく出ている」と言明。「リーマンショック以降10年続いた大いなる安定が最終局面を迎えている」とし、景気後退の際には「追加緩和策は限られている。金融政策で景気を刺激するのは難しい」と指摘。「今の政策を我慢強く続け、政府はもっと規制緩和をしろと言うことだ。打ち出の小づちはない」と語った。
消費増税に関しては、財政の健全化のために実施すると言われているが、「消費税を上げても財政の健全化にならない」との見方を示した。財政赤字の最大の原因は社会保障問題であり、税率を30%まで上げるなら別だが、社会保障に含まれている非合理的な部分を改革しない限り財政健全化はできないと指摘。「まずやるべきは歳出の改革であり、消費税の引き上げではない」と述べた。
政府・日銀は2013年1月の共同声明で、日銀ができるだけ早期に2%物価目標の実現を目指すとともに、政府は大胆な規制・制度改革など経済構造変革と持続可能な財政構造の確立に向けた取り組みを着実に進めることを公約した。しかし、2%目標の達成には程遠く、政府の成長戦略や財政再建も進んでいないとの批判が根強い。長期化する超低金利政策の副作用を懸念する声も増えている。
竹中氏は、日銀の異次元緩和は物価目標を設定して思い切った金融緩和で人々の期待を一気に変える短期決戦的な政策で、「本当は短期で元に戻したかった」と語った。政府も呼応して改革を行うはずだったが、「規制緩和は大きく進まなかった。だから地方では投資機会がない」との見方を示した。
規制緩和が地銀復活の鍵
長期化する超低金利政策や人口や企業の減少で、地域金融機関の預貸利ざやが縮小し、経営環境が悪化している。打開策の一つとみられるのが再編だ。安倍晋三首相は昨年11月の未来投資会議で、地域銀行の再編について「独占禁止法の適用に当たっては地域のインフラ維持と競争政策上の弊害防止をバランスよく勘案し、判断を行っていくことが重要だ」と言及。事実上、政府によるお墨付きを与えた。
同会議の議員を務める竹中氏は、県内での独占的な融資シェアを理由に合併を認めないという公正取引委員会の判断は「昭和というより明治の判断」とし、旧態依然だった競争政策が変わることについては歓迎する。ただ、「合併を自由に許せば地銀が良くなるかというと、そんなことはない。悪くなる程度がちょっと和らぐことはあっても、それによって地銀が復活することは考えられない」と語った。
その理由として地方に投資機会がないことを挙げ、「人口が減る中で投資機会がないという問題にメスを入れない限り、一時しのぎの政策は取れても根本的な解決にはならない」と指摘。国と地方自治体が大胆な規制緩和を進めることが地域金融機関の復活のためにも不可欠との見方を示した。