注目されていたFRBの公開市場委員会(FOMC)。今年の利上げ見通しをゼロとしたほか、9月に資産買い入れ停止を終了することを決めた。FRBがハト派になりつつあることは1月のFOMC、2月のパウエル議長の議会証言などで予想されていた。とはいえ、利上げを見送り、資産買い入れの停止終了まで踏み込むとは予想外だった。昨年末トランプ大統領の批判を物ともせず利上げを推し進めていたFRBの姿はどこにもない。タカ派からハト派へ転身しつつあるとは見ていたが、今回のFOMCを通してあっという間に完全なる“ハト”に変身が完了した。これからは金融緩和と利下げの時期を模索することになる。裏を返せば、米国経済は予想外に悪いということだ。

昨年末までトランプ大統領の格好の攻撃目標はパウエル議長だった。NY ダウが急落する中で同大統領は、「物価が上昇しないのになぜ利上げするのだ」とパウエル議長を激しく批判していた。その勢いはとどまるところを知らず、議長解任論まで巷では噂されるほどだった。そのFRBの姿勢に年明け早々から変化が出始めた。1月のFOMC後の記者会見でパウエル議長は利上げについて、「忍耐強く対応する」とハト派への転換を示唆。資産買い入れ措置も年末には終了するとの見通しを示唆するようになった。その議長が年内の利上げを見送り、資産買い入れの停止措置を9月に終了すると発表した。ハト派から完全なハトに変身した。

英国のEU離脱は相変わらず混迷している。米中の貿易摩擦も最終局面で難航している。中国は今年のGDP成長率見通しを6%に引き下げた。中南米、中東、韓国、ロシアなど経済停滞の輪は広がりつつある。こんな情勢を受けてECBは7日の理事会で実質的な金融緩和に踏み込む姿勢を鮮明にした。そして今回のFOMCである。主要な金融当局の足並みは引き締め終了で揃った。日銀やECBに比べ一足先に金融引き締めに踏み切っていたFRBが、引き締め終了を宣言した意味は大きい。世界の中央銀行はこれから金融緩和を模索することになる。だが超低金利と量的緩和の基調は続いている。選択肢がない中での金融緩和の模索だ。それ自体が金融当局にとっては経験のない、新しい非伝統的金融政策の模索になる。