[ワシントン 20日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は19─20日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、成長ペースが鈍化する中、2019年の想定利上げ回数をゼロとし、よりハト派的な政策スタンスへの転換を鮮明にした。 

バランスシート縮小については9月に終了すると表明。5月から縮小ペースを減速し、保有国債の毎月の縮小ぺースは最大300億ドルから最大150億ドルに半減する。 

FOMCでは、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.25─2.50%に据え置くことを全会一致で決定。FRBが金融政策に「忍耐強く」対応するとの方針も再表明した。 

パウエルFRB議長は記者会見で「雇用とインフレ見通しを踏まえ、政策変更が必要になるのは当面先になる可能性がある」とし、「忍耐強く」とは「FRBが判断を急ぐ必要のないことを意味する」と語った。 

FOMCメンバーの政策金利見通し分布(ドット・チャート)では年内の利上げ回数はゼロ、20年は1回の利上げが実施されるとの見通しが示された。 

この見通しを受け、米短期金利先物市場では、FRBが来年50%強の確率で利下げを実施する見方が織り込まれた。 

こうした中、パウエル議長は、米経済が「良好な状況」にあり、見通しは「明るい」と強調。同時に、英国の欧州連合(EU)離脱米中貿易問題などに絡むリスクが存在するとし、FRBは米経済見通しを注視していると述べた。 

議長は「経済指標は現時点で、FRBが金利をどちらの方向に動かすべきか示唆していない」との認識を示し、「忍耐強くなるには適切な時期にある」と強調した。 

FOMC声明を受け、米株価は上昇、米債利回りは低下。ドルは全面安の展開となった。 

FRBは17─18年に7回の利上げを実施したが、今回のFOMCの決定は、世界的な経済成長の鈍化と米経済見通しの軟化に対応し、FRBが金利とバランスシートの双方で引き締めを休止したことを示すものになった。市場ではこれまでもFRBの引き締めサイクルは終了したとの見方が出ており、今回のFOMCを受け、FRBの見解と市場の見方が一致したことになる。 

ウエスタン・ユニオン・ビジネスソリューションズ(ワシントン)のシニア市場アナリスト、ジョー・マニンボ氏は 「FRBのハト派化の度合いは市場の予想を上回った」と指摘。「FRBは政策を大きく転換させた。年内の利上げはないとの見解を示したことが特にハト派的だった」と述べた。 

FRBが今回示した経済見通しは、昨年12月の前回見通しと比べ失業率、経済成長率を含むすべての面で下方修正となった。具体的には、今年の経済成長率は2.1%とし、前回見通しの2.3%から引き下げた。失業率見通しは3.7%と、前回から若干引き上げられた。今年のインフレ率見通しは1.8%。前回見通しは1.9%だった。 

FRBはFOMC声明で、経済活動の拡大は堅調だった昨年第4・四半期から減速したとの認識を示し、最近の経済指標では家計支出と企業の設備投資の伸びが第1・四半期に鈍化することが示されていると指摘。ただ、成長は持続するとの見方も示した。 

今回のドット・チャートでは FOMC参加者17人のうち少なくとも9人が金利見通しを下方修正。全体としては、年末時点のFF金利誘導目標の見通しが0.5%ポイント引き下げられた。 

経済と金融市場の情勢が予想通りに推移すれば、資産縮小を9月に終了するという方針は、多くのアナリストの予想よりも早い時期となった。9月終了時点で償還されたモーゲージ担保証券(MBS)は、月額200億ドルを上限に国債に再投資される。これにより、FRBは保有する資産を国債に絞るアプローチにおおむねシフトすることになる。