29日、英議会下院の審議に臨むメイ首相(中央)(AFP時事)

 【ロンドン時事】英議会下院(定数650)は29日、既に2度否決されている欧州連合(EU)離脱案の3度目の採決を行い、賛成286、反対344の反対多数で否決した。メイ首相は進退を懸けて賛成を呼び掛けたが、反対姿勢を貫く与党・保守党議員らの切り崩しが不調に終わった。これにより、英国の新たな離脱期限は2週間後の4月12日となった。

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 英国は今後、4月12日の時点で混乱を招く「合意なき離脱」を受け入れるか、それともEU離脱を最大2年程度の長期間にわたって延期するかの決断を迫られそうだ。否決を受けてトゥスクEU大統領は、4月10日に臨時のEU首脳会議を招集すると表明した。

 首相は27日、離脱案が承認されれば辞任する意向を表明。29日の議会で「これが離脱を確実にする最後のチャンスだ」と訴えた。こうした結果、次期首相の座を狙うジョンソン前外相ら、前回反対した与党議員の一部が採決で賛成に回った。

 しかし、EUからの独立を重視する強硬離脱派や、メイ内閣に閣外協力している北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)は「問題は首相ではない。離脱案そのものだ」と徹底抗戦を繰り広げ、首相の捨て身の戦術は実らなかった。

 英国が離脱の長期延期を選択する場合、EU加盟国として5月下旬の欧州議会選への参加を義務付けられる。しかし、首相は、EU残留を印象付ける選挙への参加は「誰の利益にもならず、受け入れられない」と拒否しており、「合意なき離脱」に直面するリスクが依然くすぶっている。