弁護士事務所を出るカルロス・ゴーン前会長(中央)。右は妻キャロルさん=東京都千代田区で2019年4月3日午後7時13分、長谷川直亮撮影

 日産自動車の資金5億円超を自身に還流させ日産に損害を与えたとして前会長、カルロス・ゴーン容疑者(65)が会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕された事件で、東京地検特捜部が前会長の妻キャロルさんの証人尋問を東京地裁に請求したことが関係者への取材で明らかになった。しかし、キャロルさんは既に日本を出国しており、尋問は実現しない可能性が高い。

 ゴーン前会長の逮捕容疑は、日産の資金計500万ドル(約5億6300万円)を自身が実質所有する投資会社「GFI」に移したとされる。関係者によると、この資金の一部が、キャロルさんが代表を務め租税回避地に設立されたペーパーカンパニー「ビューティー・ヨット」に流れたとみられる。同社は約15億円で「MY SHACHOU(社長号)」と名付けたクルーザーを購入しており、流用資金が関連費用に充てられた可能性がある。

 このため、特捜部はキャロルさんから事情聴取する必要があると判断。ゴーン前会長を逮捕した4日朝、住居に一緒にいたキャロルさんに任意同行を求めたが、拒否されていた。

 これに対し特捜部は7日までに、任意の事情聴取に応じない参考人を裁判官に強制的に取り調べてもらう「初公判前の証人尋問」の実施を地裁に請求した。しかし、キャロルさんは5日夜にフランスに出国したとみられる。

 英フィナンシャル・タイムズ紙(電子版)が7日報じた内容によると、キャロルさんはインタビューに対し、特捜部にレバノンのパスポートを押収されていたが、押収されなかった米国のパスポートで日本を出国したと語っている。

 ゴーン前会長は2016年、キャロルさんとの再婚の披露宴をフランスのベルサイユ宮殿で挙行。この際にルノーの資金が流用されたとの疑惑が現地で報じられている。【巽賢司、遠山和宏、金寿英】