[ワシントン 6日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は6日、金融安定報告書を発表し、米株式相場は依然高く、企業負債は歴史的水準に膨らんでいるものの、金融システムは全般的に底堅いもようとの認識を示した。
報告書では「投資家のリスク選好は複数の指標で高い状態にあるもようで、企業負債は歴史的に見て高水準」と指摘。レバレッジドローン(信用リスクが高く金利が高めの融資)は昨年初めから今年にかけて20%伸び、金融以外の公開企業の負債割合は過去20年近くで最高に達したと述べた。
ブレイナードFRB理事は声明で、金融システムは全般的に健全であると判断される一方、企業負債の水準は突出しているとした上で、「金融の変動が昨年末以降和らぐ中、家計や銀行部門における低・中程度の脆弱性を踏まえ、資産価値の伸張や高リスク社債を引き続きを警戒すべき」とした。
米国株は昨年秋口に最高値を付けた後、年末にかけて2割近く下落。これをきっかけに高リスクで金利が高めの社債への選好が強まった。その後株価は再び最高値近辺に値を戻しているが、FRBによると、S&P500企業の予想株価収益率(PER)は過去30年の中央値を上回るなど、一部指標で割高の兆候がうかがえる。また企業の信用スプレッド(返済不履行リスク)も縮小しており、過度のリスクテークへの懸念も根強い。
FRBは、企業負債やレバレッジドローンの急激な伸びは懸念すべき要因になり得るほか、経済が軟化した場合、財務体質の弱い企業を直撃する恐れがあると指摘。企業負債は過去10年にわたり経済全般を上回るペースで伸びており、負債が膨らめば企業部門は経済の下降もしくは金融状況の逼迫による影響を受けかねないと警告した。ただし家計を含めた債務全般の規模は引き続き経済に見合っているとも述べた。
また外部から寄せられた当面のリスクとしては、貿易摩擦や関税、世界経済の減速、ブレグジット(英国の欧州連合離脱)、FRBの金融政策を巡る不透明性が挙げられるとした。