【北京時事】中国は大詰めを迎えていた対米貿易協議で、貿易慣行の抜本的是正策を盛り込んだ合意文書案の大幅な修正を要求、交渉は暗礁に乗り上げた。中国は合意案がバランスに欠けていると主張。一方的に譲歩したとの印象を国民に与えかねない内容に難色を示した様子がうかがえる。
国営新華社通信は11日、協議の対立点として(1)追加関税の全廃(2)輸入拡大の現実的な数値目標(3)バランスの取れた合意文書-の3点を挙げた。
ロイター通信によると、中国は今月上旬、知的財産権侵害や米企業に対する技術移転強制などを禁じる法整備の約束を撤回し、合意案の修正を求めた。合意案はいずれも中国側の譲歩を印象付ける内容で、協議に参加した劉鶴副首相は中国メディアに「どの国にも尊厳がある。合意文書はバランスが取れてしかるべきだ」と不快感を示した。
中国はまた、輸入拡大の数値目標に関し、米国の求める対米貿易黒字の短期間での解消は非現実的との認識を示唆した。これが米国の制裁関税撤廃の条件になれば、制裁が永続化しかねないとの懸念が見え隠れする。
劉副首相は一方、安定的な経済成長に向け、財政、金融両面で対策を講じる用意があると強調した。国営メディアは中国経済が既に輸出依存から脱し、現在は内需主導の成長に移っていると繰り返し報道。貿易摩擦の長期化に伴う国民の不安を和らげる狙いがあるとみられる。