[北京 16日 ロイター] – 米政府が中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への事実上の輸出規制を決定したことについて、中国側は米国の企業や雇用に悪影響が及び、両国の通商協議に影を落としかねないとして米国の対応を批判した。米国市場ではファーウェイと取引する企業の株価が値下がりした。
米商務省は15日、ファーウェイと関連70社について、米政府の許可なく米企業から部品などを購入するを禁止する「エンティティーリスト」に追加すると発表した。
トランプ米大統領は、国家安全保障上にリスクをもたらす企業の通信機器を国内企業が使用することを禁止する大統領令に署名した。大統領令は、特定の国や企業を名指ししていないものの、米当局者らはこれまでにファーウェイを「脅威」とみなし、同盟諸国に対し、5G網に同社製の機器を使用しないよう呼び掛けてきた。
ロス商務長官によると、ファーウェイとの取引禁止措置は17日から実施される。
米政府の決定を受けファーウェイは声明で、同社と米国の供給元との関係が絶たれれば「米国企業に重大な経済的被害をもたらし、全米で数万人規模の雇用に悪影響を及ぼす」と警告。さらに「当社として即刻改善措置を検討するとともに、当問題への解決策を模索する」とした。
中国商務省の高峰報道官は定例会見で、他国が中国企業に一方的に制裁を科すことに強く反対すると表明。米国は中国との通商関係をさらに悪化させるような行動を避けるべきと指摘した。その上で「中国はこれまで、国家の安全保障を悪用すべきでなく、貿易保護主義の手段に利用すべきでない、と繰り返し強調してきた」とし、「中国企業の正当な権利を断固守るためにあらゆる必要な措置を講じていく」と述べた。
米国の議員らは党派を超えて今回の決定への支持を表明。マルコ・ルビオ上院議員(共和)はツイッターで、各企業ともファーウェイと長期契約を結ぶことを考え直した方がいいとした上で「ファーウェイはまもなく半導体やアンテナ、電話操作系統など重要部品へのアクセスを失うだろう」と指摘した。ファーウェイは今やいかに存続して行くかが重大な問題になっているとも述べた。
こうした中、ファーウェイに部品を供給する企業の株価は下落。ファーウェイは半導体購入の大口顧客であることから一部半導体株に売りが出た。光学部品メーカーのネオフォトニクスは20%急落。半導体関連ではクアルコムやザイリンクス、ブロードコムなどの下げが目立った。
サスケハナのアナリストは、ファーウェイがこれまでに米国の部品に関し1―2年分の在庫を積み上げてきたとし「同社が恐れていたことが現実になった」と指摘した。
トランプ大統領は14日、中国との貿易協議は決裂していないと述べた。また、6月の20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせて習近平・中国国家主席と会談する考えも示している。
中国の高峰報道官は、米中貿易問題を解決するためには両国首脳が会う必要があるとの一部報道について質問され、報道は正しくないと指摘。その上で、現時点で米政府の交渉団が中国を訪問する予定は聞いていないと述べた。
外務省の陸慷報道官は会見で、さらなる協議に向け米国政府高官を招請したかとの質問に対し、中国は常に対話を通じた問題解決を提唱していると説明。
「交渉と協議を意義あるものにするためには、誠実でなくてはならない」とし「第一にお互いに尊重し、公平、互恵でなくてはならない。2番目に約束は守り、気まぐれではいけない」と述べた。
トランプ政権は、これまで制裁関税の対象になっていない3000億ドル相当の中国製品に最大25%の関税をかける構えをみせている。
商務省の高報道官は、「米国の関税引き上げは、協議をより困難にするだけだ」とし「米国には、できるだけ早く悪しき慣行をやめ、中・米の企業と消費者により大きな損失を与え、世界経済に『リセッション的な』影響を与えることを回避するよう求める」と述べた。
中国側は、米国との間に3つの相違があると主張する。
まず、米国との通商摩擦の発端は関税であり、合意が成立するにはすべての関税を廃止する必要があるというのが中国の見解。2つめは、劉鶴副首相が前週、詳細に踏み込まず表明した、中国が合意する方針の米国製品の追加購入の問題。3番目は、合意草案をどのようにバランスがとれたものにすべきかという問題。
高報道官は、「合意に至るには、中国側の3つの懸念が適切に解決されなければならない」と述べた。