23日からEUの議会選挙が始まる。これに先立ってオーストリアのクルツ首相は18日、下院選挙を実施すると大統領に提案した。「連立与党の極右・自由党党首のシュトラッヘ副首相が同日、ロシアとの関係をめぐるスキャンダルで辞任したことを受け、連立解消を決定。自身が率いる中道右派・国民党は単独過半数に届かないため、選挙に踏み切った」(時事ドットコム)。同じ日、イタリアでは極右政党「同盟」を率いるサルビーニ副首相が主宰した決起集会が開かれ、フランスのルペン党首やオランダのウィルダース自由党党首をはじめ12カ国の極右政党幹部が参加して気勢をあげた。極右勢力が攻勢を強める中でクルツ首相の決断は、「各国極右勢力への逆風となる可能性もある」と時事通信は伝えている。

欧州関連でいえばフランスのマクロン大統領と反対派の動きも気になるところ。この週末に就任2年目を迎えた同大統領、富裕税の廃止や燃料税の引き上げといいた公約が黄色いベストを身につた草の根勢力の強烈な反対にあっている。同大統領は燃料税の引き上げを撤回するなど妥協を見せているが、就任後2年間の実績は決して誇れるものではない。マクロン大統領は既成政党をぶっ壊し、新自由主義に基づいた経済改革を強力に推進しようとしてきた。だがその基本政策は意外に国民受けしていない。新自由主義に基づいた主流派の政策が格差拡大、移民の増大、極右の台頭を招いており、改革の方向性と国民の期待感が一致していないようだ。中間所得層を対象に減税を実施するなど、政策転換を進めているが支持率回復の見通しは立っていない。

どちらかといえば右寄りのトランプ大統領。保護主義の推進などアンチ新自由主義に近く、決して主流派ではない。アメリカ第一はグローバリズムに対するアンチテーゼだろう。通商協議の修正を突きつけた中国に追加関税とファーウェイの締め出しという強硬策で応じたが、中国の抵抗は予想外に強烈だった。ファーウェイの排除でこの週末ロイターは、「近く一部縮小する可能性がある」と報じた。強気に攻勢をかければ「中国は折れる」との読みが甘かったのではないか。手のひら返しが得意の大統領だが、今回ばかりは勇み足の印象を受ける。大統領選挙で気が急いているのだろうが、得意のディールが不調に終われば再選は難しくなる。何れにしても世界中で政治家たちがしのぎを削っているが、一体誰に女神が微笑むのか・・・。