【パリ時事】フランスのマクロン大統領は就任から2年を迎え、大企業や富裕層を優遇する政策で「金持ちの味方」と批判を受けながらも、経済面で着実に成果を出しつつある。ただ、一般庶民の実感は薄い。半年前に始まったマクロン氏への抗議デモは行き詰まり、国民の間には閉塞(へいそく)感が漂う。
16日発表の統計では、今年第1四半期の失業率は8.7%と、10年前の水準に回復。貿易投資庁によれば、同時期の外国資産家による対仏投資決定額は前年同期比で20%増となった。高額所得者を対象とした富裕税の廃止や、雇用促進を目的とした解雇手続きの簡略化など、マクロン氏の政策が実を結びつつある。
ただ、こうした政策は「金持ち優遇」と批判を浴びた。昨年11月、自動車燃料増税に端を発した抗議デモは瞬く間に全土に広まり、各地で国民が「マクロンは辞任しろ」と声を上げた。
「(庶民に)冷淡な印象を与えていた」と認めたマクロン氏はデモの収束を図るため、燃料増税の中止や最低賃金引き上げ、中間所得層の減税などの譲歩案を段階的に発表。最も批判の強かった富裕税廃止も、即時撤回は否定したものの今後見直す可能性を示唆した。
しかし、支持率は低迷している。仏メディアが10日に報じた世論調査では、就任以来最低を記録した昨年12月の23%に比べ改善したものの、32%にとどまった。マクロン氏の「購買力向上への取り組み」については73%が「失敗」だと回答。経済分野での成果が庶民の実感を伴っていないことが浮き彫りとなった。
一方で、店舗の破壊・略奪を誘発する抗議デモも支持を失いつつある。当初28万人を超えた参加者は、今や1万人台に減少。4月末のBFMテレビの調査では、市民の6割がデモに反対した。日曜紙ジュルナル・デュ・ディマンシュは、マクロン氏が中間所得層への減税を打ち出したことで、デモ隊の「金持ち優遇」批判はもはや共感を得られにくいと指摘。「抗議運動は行き詰まっている」と報じた。