• 3委員会の就任要件を緩和、スナール氏やボロレ氏らに複数のポスト
  • 日産がガバナンス改善実現へ妥協、ルノーの定款変更議案棄権意向で

日産自動車は、筆頭株主である仏ルノーが日産が株主総会に提案する指名委員会等設置会社への移行のための議案決議を棄権する意向を示したことを受け、ルノー側が求めていた指名、報酬、監査の3委員会での委員ポストを複数与える方向で調整を始めた。

Nissan, Renault and Mitsubishi Motors Heads Hold News Conference as Ghosn Seeks to Regain Clout
スナール氏と西川氏(3月、横浜市)Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  事情に詳しい関係者が明らかにした。当初の計画では4月に日産取締役に就任したルノーのジャンドミニク・スナール会長には指名委のポストを用意する方向で調整していたものの、25日の定例総会での承認を得て取締役になるティエリー・ボロレ最高経営責任者(CEO)は委員としない予定だった。

  日産の委員会設置会社への移行を提言したガバナンス改善特別委員会の3月の報告で、報酬委や監査委に関しては社外取締役以外やルノー出身者の就任は望ましくないと規定していたことも理由だったが、関係者によると日産株の約43.4%を保有するルノーが定款変更の議案決議を棄権する意向を示したことで条件を緩和し、ボロレ氏も含め複数のポストを与えることで妥協点を探ることにした。

  関係者によると、ルノー側の反応は前向きで早ければ週明けにも決定する見通しという。ガバナンス委の報告では3つの委員会の委員の数は13-15人程度が望ましいとしている。株主総会に提案される取締役は11人で1人で複数の委員を務めることも想定されている。
  
  日産はカルロス・ゴーン前会長が逮捕されて以降、権限の集中を改めるためのガバナンス改革を進めてきた。委員会設置会社への移行はその柱の一つで社外取締役を中心に各委員会を統率させ、透明性を高める計画だったが、筆頭株主のルノーが株主総会での議案承認を棄権した場合、決議できずに改革が頓挫する可能性もあった。

  ルノーから棄権の意向を伝えた書簡が届いたことについて日産の西川広人社長兼CEOは10日、「大変な驚き」とした上で、コーポレートガバナンス(企業統治)強化の動きに完全に逆行するものであり、誠に遺憾との声明を発表していた。

  声明では、委員会設置会社への移行はガバナンス委からの提言に基づくものでスナール氏らルノー出身者も含め取締役会で全会一致で決議していたと指摘。今後は「理解が得られるよう最善の努力をしていく」方針だとしていた。

  スナール氏は12日のルノー株主総会で、書簡を送った理由についてルノーの権限抑制が正常のものではないためとし、日産の案ではルノーの取締役会の委員会に日産指名の役員が持つのと同様の発言権が、ボロレ氏には与えられないと指摘した。ルノー側はこの点を問題視してボロレ氏を委員のメンバーとするよう求めているという。

  日産広報担当の浜口貞行氏は取材に対し、コメントを控えた。前日比で下落していたルノー株は報道を受けて上昇に転じ、フランス時間午後3時28分現在、0.1%高で取引されている。