[上海/香港 13日 ロイター] – 米国政府が中国の華為技術(ファーウェイ)に米企業との取引を事実上禁止して以来、中国の指導部は果敢にも半導体技術を自前で賄うと主張している。 

しかし業界関係者によると、中国の半導体産業は技術的にまだ西側諸国にかなり遅れを取っている上に有能な人材の確保も容易ではなく、ファーウェイなど国内ハイテク企業の全ての需要を満たす製品を供給するという課題をすぐにクリアするとは考えにくいという。 

中国の半導体技術者の話では、国内の製造部門は及第点に達していない。まだ多くの分野で米国、台湾、韓国、日本、欧州に依存しているのが実情で、政府補助は効率が悪いし、愛国主義に訴える政府の政策にも限界がある。 

半導体設計大手、紫光展鋭(Unisoc)の元技術者は、関連会社のメモリー半導体を使うように何度も働き掛けを受けたが、この関連会社は十分に進んだ技術を提供できなかったと打ち明けた。 

海外の半導体業界関係者からは、中国は一部の分野がかなり進歩し、侮るべきではないとの声も出ている。特にNAND型フラッシュメモリーでは中国が差を詰めつつあるとの見方だ。 

韓国のメモリー半導体メーカーの幹部は「中国政府にとって資金は問題ではない。中国企業の動きを止めることはできない。それが自由競争だ。ただ、われわれの方が技術的には上で、製品も優れていると信じている」と話した。 

中国にとって最大の課題は、極めて特殊な装置や長年の経験の積み重ねを必要とする半導体製造工程にある。 

光大証券は5月のリポートで中国の半導体産業について、製造工程は装置に依存しており、この分野では米企業が非常に大きなシェアを握っていると分析。「中国製の製造装置のみを使用している生産ラインは中国国内には存在せず、米国製装置を使わずに半導体を製造するのは極めて困難だ」と説明した。 

中国メーカーが米国や日本、欧州の製造装置メーカーから機器を輸入しても、装置を完璧に動かすことはできない。高性能半導体の製造工程では、装置を動かす上で欠かせない微妙な操作がメーカーとの秘密保持契約(NDA)で保護されているためだ。 

業界関係者によると、半導体受託製造の中国最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)は最新の製品をもってしても、台湾積体電路製造(TSMC)に約2世代分先行されている。TSMCは昨年、線幅7ナノメートルの製品の製造を開始したのに、SMICはようやく14ナノメートルの製品の生産準備を進めているところで、この線幅が最先端だったのは2014年だ。 

ファーウェイは高性能チップセットの製造ではTSMCの装置、低機能向けでSIMCの装置をそれぞれ使い分けている。 

中国の半導体産業は有能な人材の不足が何度も露呈しており、日本や韓国、台湾は専門技術の育成に数十年掛かったとの見方もある。中国は海外、特に台湾と韓国から、魅力的な条件を提示してトップクラスの人材をリクルートしようとしているが、必ずしも実を結んではいない。 

中国の半導体メモリーメーカー、CXMTは昨年、韓国のサムスン電子から半導体技術者を引き抜こうとしたものの、韓国の裁判所が移籍差し止めを命じた。 

ベンチャーキャピタル会社グローリー・ベンチャーズのエリック・ヤン氏は、装置やシステムの動作に必要な機能の全てを1つの半導体に盛り込む「システムオンチップ(SoC)」など、複雑な最新の製品では先発組が有利な立場にあり、壁を打ち破るのは難しいと指摘。「半導体製造には多くのノウハウが欠かせない。人材が手に入らなければ競争に勝てないが、あらゆる人材は米国が握っている」と述べた。