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元徴用工らに賠償を命じる判決が出た後、万歳をする原告ら=2018年11月、ソウル、牧野愛博撮影

 韓国の大法院(最高裁)が元徴用工らへの賠償を日本企業に命じた判決をめぐり、韓国外交省は19日、被告企業が韓国企業と資金を出し、勝訴が確定した原告に賠償相当額を払えば、日本政府が求める外交協議に応じるという立場を発表した。こうした考えを最近、日本政府に伝えたという。

 元徴用工訴訟に絡み、韓国政府が日本に具体的な提案をしたと明らかにしたのは初めて。資金を出す韓国企業には、1965年の日韓請求権協定による経済協力金で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手ポスコなどを想定しているとみられる。

 大法院は昨年、日本製鉄(旧新日鉄住金)と三菱重工業に、元徴用工ら原告32人に1人あたり約1億ウォン(約900万円)前後の賠償を命じた。外交省は発表で「判決を尊重し、高齢の原告を迅速に救済、日本の要請にも応えるバランスをとった案だ」としている。

 河野太郎外相は19日、この提案について「受け入れることはできない」とした。日本政府は同日、韓国に対し、請求権協定に基づいて日韓を含まない第三国のみの仲裁委員会設置を求めた。日韓と第三国による仲裁委の設置を求めていたが、期限だった18日までに韓国側が仲裁委員を任命せず、新たな措置を要請した。日本側は次の期限を7月18日としている。

 日本製鉄は19日、朝日新聞に「この問題は政府間で解決済みというスタンスは変わらない」、三菱重工業は「日本政府と連携して適切に対応していきたい」とした。(武田肇=ソウル、鬼原民幸)