[ブリュッセル 27日 ロイター] – 米国のエスパー国防長官代行は27日、北大西洋条約機構(NATO)の国防相理事会で米国にはイランと戦争する意図はないと表明した。ただ米国は一段の事態発生は容認しない姿勢も示した。
非公開のNATO国防相理事会に出席していた外交筋によると、エスパー長官代行は、米国はオマーン沖で発生した石油タンカーの攻撃の背後にイランがいたと見なしているとしながらも、状況の悪化は望んでいないと指摘。「エスパー氏は米国はイランとの戦争は望んでいないと強調した。ただ、イランの行動について米国が容認するのはこれが限界で、今後のいかなる事態発生も容認しない姿勢を示した」と述べた。
エスパー氏は国防相理事会後の記者会見で、NATO加盟国に対しイランの敵対的な行動を公に非難し、原油輸送の要衝であるホルムズ海峡の安全を確保する現在進行形の計画に参画するよう呼び掛けたと明らかにし、「NATO加盟国と地域のパートナー国に対し、イランの行動を非難し、国際問題化する必要があると主張した」と述べた。ただ米国とイランとの間の緊張の緩和に協力するよう要請したことも明らかにした。
NATOのストルテンベルグ事務総長は国防相理事会後の記者会見で「米国が戦争を望んでいないと明確に示したことは重要だ。米国はイランと前提条件なしで協議を行う用意があると明確に示した」と述べた。
トランプ米大統領は今月21日、イランによる米軍の無人偵察機撃墜に対する報復措置として軍事攻撃を承認したものの、無人機の撃墜の報復として軍事攻撃は釣り合いが取れないと判断し、攻撃開始時間の10分前に撤回。 外交筋によると、欧州各国は今回の国防相理事会で、米国とイランとの間の緊張緩和に向けたあらゆる外交努力を尽くす方針を示した。
エスパー氏は、米国は戦争を望んでおらず、逆に欧州諸国に対し外交努力を支援するよう呼び掛けたとし、「米国はイランとの軍事衝突は望んでいないが、この地域における米軍、および米国の国益を守る用意はある。自制が弱さと解釈されることがあってはならない」と述べた。
米当局者は、エスパー氏が示した姿勢に多くの国が賛同したと表明。ただ外交筋によると、フランスがイランを巡る危機にNATOが正式に関与する可能性について懸念を示した。この件に関して、仏政府当局者からコメントは得られていない。
このほか、ドイツは2015年のイラン核合意について「今となってはこの合意しか残されていない」とし、重要性を改めて強調した。
エスパー氏は、これまでのところNATO加盟国で何らかの貢献をした国はないとしながらも、商業船に対する攻撃防止に向けた方策の検討はまだ「初期の段階」にあると指摘。NATO外交筋は、特定の要請はなかったとしているが、エスパー氏は記者団に対し、より広範な海上監視のほか、船舶の護衛などが選択肢として考えられるとし、「何が最も理にかなうか検討する」と述べた。