- サムスンとSKハイニックス、生産削減や停止も準備-関係者
- 日韓双方に影響、代替品調達も短期間では困難-韓国研究機関
日本政府が4日に発動した韓国に対する半導体材料などの輸出規制の強化は、サムスン電子やSKハイニックスなど主要メーカーの生産抑制を引き起こし、世界の半導体供給網(サプライチェーン)に影響を与える可能性がある。日本のメーカーにも打撃が及びかねない。
半導体は米アップルのiPhone(アイフォーン)から、デル、中国のレノボ・グループ(聯想集団)のパソコンやサーバーまで幅広く使用されている。サムスンの李在鎔(イ・ジェヨン)副会長は、日本のメーカーと緊急協議するため、週末に東京へ飛んだ。
微妙な政治問題だとして匿名を条件に取材に応じた複数の関係者によると、サムスンとSKハイニックスは代替品の確保を急いでいる。2社は顧客に対し、影響を最小限に抑えるため努力すると伝えた。ただ、状況次第では生産の削減や停止も準備しているという。
日本政府は4日から、シリコンウエハーの表面に回路を描き込む際に使うエッチングガス、回路の焼き付けに用いるレジスト、有機ELパネルなどに利用されるフッ化ポリイミドの3品目について、輸出許可取得の手続きが簡素な「包括輸出許可制度」の対象から韓国を除外し個別の許可制とした。
輸出管理強化対象品目 | 日本のメーカー |
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レジスト(感光材) | JSR、東京応化、信越化学、富士フイルム |
フッ化水素(エッチングガス) | ステラケミファ、森田化学(非上場)、ダイキン |
フッ化ポリイミド | 住友化学 |
注:住友化学については台湾の調査会社の調査に基づくもので会社側は否定。
仏ソシエテ・ジェネラルでは、韓国企業はフッ化ポリイミドで90%、エッチングガスで44%をそれぞれ日本に頼っていると試算する。
楽天証券の今中能夫チーフアナリストは5日付のリポートで、3品目のうち特にエッチングガスは半導体製造に不可欠で、輸入が停滞すれば「韓国半導体メーカーへの打撃は大きくなる」と指摘する。レジストも生産が始まったばかりの最先端技術向けで、成長が期待されているという。
韓国メーカーに製品を供給する日本への影響も避けられそうにない。韓国の対外経済政策研究院の研究員は、今回の輸出規制強化について、日韓企業の双方にかなりの影響を与えるだろうと指摘。代替品の調達についても短期間では難しいとの見方を示した。
ライバル
韓国勢の失速分を埋めようと世界のライバルたちが動き出す可能性がある。米マイクロンテクノロジーは大きな恩恵を受ける業者だ。半導体受託生産の台湾積体電路製造(TSMC)は、米クアルコムやエヌビディアを顧客に持つサムスンとの差を広げることもできる。
経済産業省安全保障貿易審査課によると、これまで韓国向けの輸出は一度申請すれば許可が3年間有効だったが、輸出のたびに申請が必要になった。原則として審査には90日以内の時間を要し、従来より申請書類の種類も増えた。ただ、日本企業が海外で生産した製品は対象外となる。
安倍晋三首相は7日、輸出規制の強化は徴用工問題の「対抗措置ではない」としたものの、「国と国との約束が守れない中において、こうした貿易管理においてはちゃんと守れないだろうと思うのは当然ではないか」と述べた。