【ソウル時事】元徴用工問題をめぐる日本政府の仲裁委員会設置要請に対し、韓国の文在寅政権は期限の18日になっても応じなかった。日本政府が対韓輸出規制強化に踏み切っても、文政権は問題解決への打開案を示せず、1965年の国交正常化以降、「最悪」とも呼ばれる日韓関係は対立の「出口」が見えない状況が続く。
◇危機感高まるが…
輸出規制の強化以降、韓国メディアは連日、日本政府の「経済報復」を強調し、国民の危機感をあおっている。18日発表の世論調査によると、日本製品の不買運動に参加していると回答した割合は前週比6.6ポイント増の54.6%で、今後参加する意向があると答えた人は66%に上った。
「輸出規制が拡大すれば、経済に及ぼす影響が少ないとは言えない」。韓国銀行(中央銀行)の李柱烈総裁は18日、2016年6月以来となる政策金利の引き下げを決定後、記者会見でこう語った。19年の国内総生産(GDP)の成長率見通しも従来予想から0.3ポイント引き下げ、2.2%に下方修正した。
17年5月の政権発足以来、最低賃金の急激な引き上げなどで韓国経済は低迷が続く。輸出規制が文政権に与えるダメージは小さくない。だが、韓国外務省報道官は18日、「日本が一方的に設定した日付だ。拘束される必要があるのか」と述べ、仲裁委設置要請に応じない姿勢を強調。問題解決に本格的に取り組む気配はない。
◇司令塔が不在
輸出規制の背景に「国際約束をほごにした」(安倍晋三首相)韓国側への不信が日本側にはある。だが、文氏は「一方的な措置」と批判を繰り返し、18日には与野党代表と会談して「追加措置は北東アジアの安保協力を脅かす」と日本をけん制する共同声明を発表。国内の協力体制構築へとつなげた。
文政権は当初、「司法の判断尊重」を理由に介入を控えていたが、日韓企業が資金を拠出し原告らに慰謝料相当額を支給するという案を日本側に提示して一蹴されるなど、ちぐはぐな対応が目立つ。国民大学日本学研究所長の李元徳教授は「司令塔が誰かはっきりしていない。混乱が続いている」と分析する。
原告側が日本企業の資産売却を進め、実害が生じれば、日本側が対抗措置に動くのは必至。李教授は「国際司法裁判所(ICJ)に共同提訴すれば、(その間は)売却手続きが保留され、輸出規制の名分も曖昧になる」と指摘し、対立激化を一時的に回避する必要性を強調する。ただ、文政権は提訴に応じないとみられ、「未来志向の関係」(文氏)を目指したはずの対日外交は混迷の度合いをさらに深めそうだ。