[ブリュッセル 20日 ロイター] – 欧州連合(EU)は20日、ジョンソン英首相が求めるEU離脱協定案の再交渉に応じない姿勢を鮮明にした。協定案の争点とされるアイルランド国境問題の解決策 「バックストップ(安全策)」を巡り、英国が「現実的な代替策」を提示していないと批判した。
ジョンソン首相は前日、トゥスク大統領に書簡を送り、バックストップをEU離脱協定案から削除するようあらためて要求し、その代わりに離脱後の移行期間中に代替策を導入するとの合意を盛り込むことを提案した。
トゥスクEU大統領はツイッターへの投稿で「バックストップは代替策が見つかるまで、ハードボーダー(物理的な国境)の復活を回避するための保険」と言明。「バックストップに反対しつつも、現実的な代替策を提案していない人々は、たとえ認めていなくても、国境の復活を実際に支持している」と批判をあらわにした。
メルケル独首相は、EUには「実務的な解決策」を検討する用意があるとしつつも、メイ前英首相と合意した離脱協定案を変更する必要はないと言明した。
さらに、ロイターが確認した欧州委員会の文書からは、EU加盟27カ国が、ジョンソン英首相が目指すバックストップ削除に遺憾を表明し、反対する構えで一致していることが明らかになった。
同文書は、「アイルランド島におけるハードボーダー復活を回避するため、バックストップは離脱協定案において必要かつ、法的に運営可能な解決策」と言明。「英新政権がこうした法的に運営可能な解決策ではなく、期日までに代替策を模索するコミットメントを望んでいることを残念に感じる。また、代替策はまだ見つかっていない」とした。
こうしたEU側の反応を受け、ジョンソン首相は記者団に対し、EUが離脱を巡る再合意に「幾分否定的」としつつも、自身は実現可能と確信していると述べた。
「合意なき」離脱の可能性に敏感な英ポンドは下落。とりわけトゥスクEU大統領のツイートが圧迫材料となり、対ユーロとドルで約3年ぶりの安値に沈んだ。その後、メルケル独首相の発言を受け、下げ幅を幾分縮小した。