[ニューヨーク 23日 ロイター] – ニューヨーク外為市場ではドルが幅広い通貨に対して下落した。中国が対米報復関税の発動を発表したことを受け、トランプ米大統領が米企業に対し中国から事業を撤退させ、米国内での生産を拡大するよう要請し、米中貿易戦争が一段と悪化したことが背景。

中国商務省はこの日、米国から輸入する約750億ドル相当の製品に5─10%の追加関税を課すと発表。トランプ大統領はこれを受け、「米企業に対し中国の代替先を直ちに模索するよう命じる。事業を米国に戻し、米国内で生産することも含まれる」とツイッターに投稿。「われわれに中国は必要ない。率直に言えば、中国がいない方が状況はましだろう」とした。

これを受けドルが売られ、対ユーロで下落に転じたほか、対円と対スイスフランで1週間ぶりの安値を付けた。ただ、ドルはオフショア市場の中国人民元に対して上昇した。

トランプ氏のツイートを受け、米10年債利回りも大きく低下。ステート・ストリート(ボストン)のシニア世界市場ストラテジスト、マービン・ロー氏は「トランプ氏の中国に関する最新のコメントを受け、米経済が景気後退(リセッション)に陥るとの懸念が台頭した。ドル相場や米国債利回りの動きはこうした懸念を如実に反映している」と指摘。ラボバンクのシニア米国ストラテジスト、フィリップ・マーレー氏は「貿易戦争を激化させることで、トランプ大統領はFRBから利下げを引き出すことができる」と述べた。

この日は連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長がワイオミング州ジャクソンホールで開催中の経済シンポジウムで講演。米経済は「良好な立場」にあり、FRBは足元の景気拡大を維持すべく「適切に対応」すると表明したものの、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを行うかについては明言しなかった。

パウエル議長が利下げを確約しなかったことで、これまでも繰り返しFRBに対し利下げ圧力を掛けているトランプ大統領は「パウエルFRB議長と中国の習近平国家主席のどちらが米国に対するより大きな敵なのか」とツイッターに投稿し、議長を痛烈に批判。パウエル氏の講演よりトランプ氏のツイートの方が市場に大きな影響を及ぼす結果となった。

午後の取引でユーロは0.6%高の1.1148ドル。一時は1.1052ドルと、3週間ぶりの安値を付けていた。ドル/円JPY =は1.1%安の105.32円。主要6通貨に対するドル指数は0.6%安の97.624。ドルは人民元に対し0.6%高の7.1314元。一時は2週間ぶり高値となる7.1383元を付けていた。

ドル/円 
NY終値 105.39/105.42
始値 106.63
高値 106.73
安値 105.26

ユーロ/ドル
    NY終値1.1144/1.1145
始値 1.1054
高値 1.1153
安値 1.1053