- アントの「余額宝」は13年の投入以降、6億人余りを引き付けた
- 余額宝のリターンは年率2.29%に低下-14年は6.7%だった
かつて年率7%近いリターンを誇っていた世界最大のマネーマーケットファンド(MMF)の資産規模が、わずか1年強で1200億ドル(約12兆8400億円)余り縮小した。このままいけば世界一の座から陥落することになる。
アリババ・グループ・ホールディングの創業者、馬雲(ジャック・マー)氏の螞蟻金融服務集団(アント・ファイナンシャル)が提供するMMF「余額宝」の運用資産は6月末時点で1兆300億元(約15兆4200億円)。これは現在のドル換算では1440億ドル相当だ。2018年3月末のピーク時は2700億ドル相当だった。
ブルームバーグの集計データによれば、余額宝は「JPモルガンUSガバメント・マネー・マーケット・ファンド」や「フィデリティ・ガバメント・キャッシュ・リザーブ」に資産規模で抜かれる方向に進んでいる。JPモルガンUSガバメントは17年以降、1500億ドル前後の水準で推移している。
余額宝は以前、中国の比較的高い銀行間金利の恩恵にあずかっていた。だが当局が17年にMMF市場の抑制策に着手すると投資家の流出が始まった。リターン低下に加え、より魅力的な利回りを提供する競合商品が次々と現れたことも資金流出に追い打ちとなった。
中信証券(CITIC証券)の債券調査責任者、明明氏は「低金利がMMFの魅力を損ねた」と述べ、「銀行の資産運用商品(WMP)より魅力的でなくなった」と指摘した。
余額宝は13年の投入以降、6億人余りの中国人投資家を引き付けた。アントの決済プラットフォーム「支付宝(アリペイ)」で購入できる余額宝に最低投資要件はない。その規模の巨大化を受け、国営テレビの著名コメンテーターから「吸血鬼」とのレッテルを貼られたこともあった。
アントは資料で、余額宝はアリペイの余剰資金運用サービス「余額宝」プラットフォーム上のMMF24本の1本にすぎず、MMF1本の運用資産規模変動は同プラットフォーム全体の運用成績を反映していないとコメントした。
最新データによれば、MMF余額宝のリターンは年率2.29%に低下。14年は6.7%だった。調査会社PYスタンダードのデータは、中国の銀行が提供しているWMP、いわゆる「理財商品」のリターンは今年7月時点で4%を超えていたことを示している。
原題:World’s No. 1 Money-Market Fund Shrinks by $120 Billion in China(抜粋)