[ベルリン 10日 ロイター] – ドイツのメルケル首相は10日、独政府は財政均衡政策を堅持すると述べ、ドイツが財政刺激策を導入するとの観測の緩和に努めた。
メルケル首相は納税者連盟が主催したイベントで「連邦政府として堅固な財政政策に対する責任を真剣に受け止めている」とし、「財政均衡を保つ目標を堅持すると確約する」と述べた。
これに先立ちショルツ財務相はこの日の議会下院での予算審議で、ドイツが経済危機に見舞われた場合でも、経済に「数十億ユーロ」を注入することによって対処可能と強調し、独経済がリセッション(景気後退)に陥った場合に大規模な刺激策を講じる用意があることを示唆した。
同相は、ドイツはこれまで、経済危機が起きた場合に備えて、慎重な予算設計や、新規の借り入れをしない政策を取り、財政基盤を強化してきたと説明。こうした対応により、ドイツは経済が危機に見舞われた際に一段の措置を導入できる立場にあるとし、「欧州連合(EU)最大の経済規模を持つドイツが、負の経済トレンドを反転させることができるかどうかは、非常に重要だ」と述べた。
その上で同相は「われわれは今や、しっかりとした財政基盤を持っており、経済危機が実際にドイツや欧州を襲った場合でも、数十億ユーロを注入して対応できる状態にある」との認識を示した。
ただ同相は、現時点では経済危機は起きていない、と付け加えた。
ロイターは前日、関係筋の話として、ドイツ政府が連邦予算には含まれない新たな債務を引き受ける独立した公共団体の設立を検討していると報道。厳格な財政ルールに抵触しない「影の予算」創設で、低迷する国内経済への投資を行うと報じた。
ドイツの経済成長率は第2・四半期はマイナス0.1%。その後も経済指標は軟調となっており、第3・四半期もマイナス成長となる可能性がある。2四半期連続のマイナス成長で定義付けられるリセッションに陥れば、2013年以来となる。
政府が支出拡大に動くとの期待から、独30年債DE30YT=RR利回りはこの日の取引で約1カ月ぶりに一時プラス圏を回復。ただその後は再びマイナス圏に戻った。
ショルツ財務相は予算審議で、気候変動を巡る状況は危険な水準に達したとの認識を示し、連立与党は温暖化ガス排出削減に向け積極的な措置を打ち出す必要があると指摘。「われわれは瀬戸際に立たされている。小粒な措置では対応できない。真剣にリセットボタンを押す必要がある」と述べた。
アルトマイヤー経済相も、温暖化ガス排出削減に向け市場に沿った措置を打ち出す必要があるとし、非営利の気候変動関連の団体を設立し、政府が当初50億ユーロの資金を投入した上で、関連プロジェクトに無利子融資を提供する案を提案。こうした非営利団体を通した融資は連邦政府が自主的に導入している財政均衡ルールには抵触しないとした。