14日、サウジアラビアの石油施設が何者かによって攻撃された。サウジと敵対するイエメンの親イラン武装組織フーシ派が直後に「無人機(ドローン)10機で攻撃した」と犯行声明を発表した。だが、米国はこれを無視して「攻撃がイエメンからのものである証拠はない」(ポンペオ国務長官)とイラン主犯説を示唆。直後に米政府高官は匿名を条件に、「攻撃はイランによるものだった」との見解を示した。もちろんこうした動きにイランは反発、外務省のムサビ報道官が「米国の非難は的外れだ」と一蹴している。これが石油施設に攻撃を仕掛けた犯人をめぐるこれまでの報道の概要である。イエメンは自分でやったと名乗り出るが、米国はこれを受け入れずイランだと主張。当のイランは「的外れ」と逆に米国を攻撃する。国際報道の常だが真実は一向にわからない。
何か手がかりはないか、今朝のニュースを当たってみる。攻撃されたのはサウジの東部にあるサウジアラムコの石油施設。イエメンの主張が正しければ攻撃は南から仕掛けられるはず。米政府高官によると攻撃は「南のイエメンからではなく、西北西の方向から仕掛けられた」という。イランはサウジの東部から見れば北東に位置する。方角的には西北西から仕掛けたとする米政府高官の発言に合理性があるように思われる。フーシ派が主張するドローン10機が紅海を北上、西北西から回り込んで攻撃することも可能だが、広大なサウジの領空を誰にも見つからず飛行するのは不可能だろう。米国が主張するイラン説に一理ある。ところが、イランではないという新た説も浮上する。イラクの一部メディアが「攻撃はイラクから行われた」と報じたのだ。
もちろんこの報道、イラク政府は否定している。イラクはイランの西側に位置している。政府高官がいう「西北西」という説が正しければ、イラクからの攻撃がこの条件と合致する。イラクは親米でサウジと敵対しているわけではない。この説は誰が見ても直感的には「そんなことはないだろう」と反応する。だが、ロイターによると「イラクではイランの支援を受けた武装勢力が影響を強めている」という。この組織に巡航ミサイルを使った攻撃が可能かどうかわからない。ただ、この武装組織はイランの支援を受けている。とすれば、イエメンではなくイラクの武装勢力という説もあながち的外れではない。この説でもイランの関与が疑われる。魑魅魍魎が蠢く紛争地帯。真実はいずれ明らかになるだろう。意外に思ったのはロシアのプーチン大統領。サウジに対してインフラ防衛用のミサイル防衛システムの提供を提案したとロイターは伝えている。生き馬の目を抜く国際政治のこれが実態か。
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