- 北アイルランドのEU関税同盟残留を独首相が要求、英首相が拒否
- 英政府、合意なき離脱計画の最新文書公表「方針は一時的で一方的」
ジョンソン英首相はドイツのメルケル首相に対し、北アイルランドが欧州連合(EU)の関税同盟内にとどまることをEUが求めるならば離脱を巡る合意は「本質的に不可能だ」と伝えた。両首脳は8日午前に電話で対話した。それに先立ちスペクテーター誌が掲載した首相官邸当局者のテキストメッセージは、ジョンソン政権が交渉決裂の準備をしていることを明らかにしていた。
英内閣はこの日、合意なき離脱計画の最新文書を公表した。英国とEUの協議はブリュッセルで続いている。
英国は合意なき離脱の場合もアイルランドとの国境に構造物を設けないとしているが、英国からの輸出品は関税の対象になり、アイルランドに持ち込まれる時点で検査が行われることは認めた。最新文書によれば、北アイルランドに入る物資について新たな検査は設けず、「可能な限り」現状を維持する。
ただ、こうした方針は持続できない可能性があり、恒久的な解決策をEU側と協議するとしている。「方針は一時的かつ一方的なものであるため、大きなリスクが残る。英政府は離脱後できる限り早急にアイルランド政府およびEUとの協議を目指す」という。
原油および精製燃料の供給は合意なき離脱の場合でも問題はないとする一方、パスポート制度を使って欧州経済地域(EEA)でトレーディングする金融サービス企業の顧客はリスクを完全には免れないと説明した。
英当局者によれば、メルケル首相はジョンソン首相に、EUと合意を結ぶためには北アイルランドがEU関税同盟内にとどまる必要があると伝えた。ジョンソン首相は、EUが英国の新提案について協議しようとしない姿勢に加えてこの要求を突きつけるなら、合意は本質的に不可能だと答えた。
ここ数日にはほとんど進展がなく、英当局者らは協議が決裂寸前だと考えている。電話会談の内容について先に伝えたBBC放送によると、英首相府は事態が決定的になったと捉えている。
ドイツ首相府は英独首相の電話会談が行われたことを認めたが、内容についてはコメントを控えた。トゥスクEU大統領はジョンソン首相が「ばかげた非難合戦」をしていると批判。ばかげた非難合戦にどちらが勝つかではなく、欧州と英国の未来および域内市民の安全と利益がかかっているとツイッターでコメントした。
.@BorisJohnson, what’s at stake is not winning some stupid blame game. At stake is the future of Europe and the UK as well as the security and interests of our people. You don’t want a deal, you don’t want an extension, you don’t want to revoke, quo vadis?
英政府は8日、合意なき離脱の場合の混乱を避ける措置の一環としてトラックと燃料、衣料品を対象とした関税の修正を発表した。
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原題:Johnson Tells Merkel Deal Essentially Impossible: Brexit Update(抜粋)