[東京 8日 ロイター] – 日産自動車(7201.T)は8日、内田誠専務執行役員(53)が社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格するトップ人事を発表した。最高執行責任者(COO)には傘下の三菱自動車(7211.T)のアシュワニ・グプタCOO(49)が就く。グプタ氏を補佐する副COOに関潤専務執行役員(58)を充て「集団指導体制」とする。人事発令は遅くとも来年1月1日付を目指す
木村康取締役会議長は同日夜、取締役会終了後に会見し、今回の人事は「取締役全員の総意だった」と指摘。内田氏が「事業の前進にふさわしいリーダーと判断した」と述べ、「強いリーダーシップによる新体制で早期業績回復と再建に全社一丸で取り組んでほしい」と語った。
人選を進めてきた豊田正和・指名委員会委員長も会見に同席し、内田氏について、子ども時代から海外経験が豊富で、旧・日商岩井(現・双日)を経て日産に入社し、仏ルノー(RENA.PA)との業務に携わったほか、重要市場の中国事業のトップを務めるなど「多彩な経験」から「難しい時期のリーダーとしてふさわしい」と評価したと説明した。アライアンスに憧れて日産に入社したという内田氏の動機が「印象深い」という。
木村氏は、候補の1人だった暫定CEO兼COOの山内康裕氏ではなく、内田、グプタ、関の3氏を選んだ理由について「新生・日産のイメージを強く出せる」ことを重視した結果だと説明。西川広人前社長兼CEOの後任人事を1人ではなく3人体制としたのは「ある種の集団指導体制という形でお互い切磋琢磨して支え合いながら経営していくことが、非常に透明性があるし、公平な判断ができる」と指摘した。
豊田氏は、3氏の共通点として、1)国際人、2)アライアンスを重視、3)決定にスピードを重視――の3点を挙げた。日本人の内田氏、インド出身のグプタ氏、技術畑の関氏と説明し「内田氏をグプタ・関の両氏が支える形で進めるのが、困難な状況を乗り越えるのに一番良い体制との意見で一致した」と述べた。その上で「多様性のあるリーダーシップを発揮していただくことが望ましい」との期待感を示した。
山内氏の今後について、豊田氏は「今後の課題」と述べた。
もともと日産は、新社長兼CEOの人選の期限を10月末にしており、やや早い決定となったが、木村氏は「スピーディに決めることが全員一致の総意」だったと明かした。もっとも、人選は7月から本格的に進めており、西川前社長兼CEOの辞任が発表された9月9日からの短期間というわけではないとも説明した。
西川体制時代に策定された現在進行中の中期経営計画について木村氏は「最終的には新執行部がどう考えるかによる」と前置きした上で、一般的な中計は見直すケースもあるとし「西川氏の中計」ではなく「日産の中計」として達成すべくやってほしいとの期待を述べた。
人事の発令時期は、各氏の引き継ぎに要する時間を考慮した。豊田氏によると、グプタ氏が勤める三菱自にも連絡済みで「今後調整をお願いする」とした。
ルノーに近い関係筋は、今回の人事について「アライアンスにとって勝利だ」と述べ、内田氏とグプタ氏が共に事業を熟知しており、日産建て直しへの備えができているとの見方を示した。