「強がるな。バカなまねはよせ」。トルコ軍がシリア北部で少数民族クルド人の武装組織「人民防衛隊」(YPG)への越境作戦に踏み切った9日、トランプ米大統領はトルコのエルドアン大統領に攻撃を思いとどまるように警告する手紙を送っていた。手紙はトルコ側に届いたものの、ゴミ箱に捨てられていた。
手紙は、トランプ氏がエルドアン氏との電話会談でトルコの軍事作戦を黙認し、シリア北部からの米軍撤退を表明する声明を出してから3日後の9日付。「良い取引を実現しよう!あなたは数千人を虐殺する責任を負いたくないだろう。私も(経済制裁で)トルコ経済を破壊する責任を負いたくない」と、クルド人勢力側との交渉による解決を呼びかけている。
さらに、トランプ氏は「正しく、人道的な方法をとれば、歴史はあなたを好意的に見るだろう。良いことが起きなければ、歴史はあなたを永遠に悪魔として見なすだろう。強がるな。バカなまねはよせ。後で電話する」と終止くだけた調子でつづっている。
手紙について、トルコのチャブシュオール外相は20日に出演した地元テレビ番組で、「トルコは真剣な国家だ。こんな手紙の行き場所はどこか。ゴミ箱だ。回答は軍事作戦の形で返した」と述べた。
トルコ軍の作戦開始後、トランプ氏は過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦で共闘したYPGを見捨てたとの批判が高まり、14日にはトルコへの経済制裁を発動。16日の記者会見で自ら手紙に言及し、「私はトルコに攻撃の許可を出していない」と強調していた。(イスタンブール=其山史晃、ワシントン=渡辺丘)